児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ

30歳で独立、31歳で出版社(いずみ書房)を創業。 取次店⇒書店という既成の流通に頼ることなく独自の販売手法を確立。 ユニークな編集ノウハウと教育理念を、そして今を綴る。

おもしろ民話集

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 3]

昔むかし、ある小さな村に、おばあさんが住んでいました。
おじいさんが死んでしまったので、ひとりっきりです。でもおじいさんが残してくれた財産がありましたから、仏壇に手をあわせ感謝しながら、しあわせに暮らしていました。

ある日の夕方のこと。ひとりのお坊さんが訪ねてきました。
「道に迷ってしまった旅の坊主です、今夜一晩泊めてもらえないでしょうか」
おばあさんは「それは、おこまりでしょう」といって、お坊さんを家に入れると、あたたかいごちそうを作って、もてなしました。そして、食事が終わると、こんどはおばあさんがお坊さんにお願いをしました。
「泊めてさしあげる代わりにお願いするようで申し訳けありませんが、仏壇のじいさまのために、お経をあげてもらえませんでしょうか」と、たのみました。
ところが、お坊さんはこまってしまいました。坊さんのかっこうはしていても、お経を知らなかったのです。でも、坊さんがお経を知らないとはいえません。仏壇の前に座り、手を合わせて考えこんでしまいました。
するとその時、障子のすきまからネズミが現われました。そこで、お坊さんは、お経のようなふしをつけて言いました。「おんきょろきょろ、おでましなさる」
その次に、ネズミがきょろきょろあたりをみまわしたので、やっぱりふしをつけて、言いました。「おんきょろきょろ、みまわりなさる」
やがてネズミはチュウチュウ鳴いて、障子のかげにかくれてしまうと、続けていいました。
「おんきょろきょろ、ささやきなさる」「おんきょろきょろ、おかえりなさる」
さあ、これを聞いたおばあさんは、何とありがたいお経だろうとすっかり信じて、それから毎晩仏壇に手をあわせては、「おんきょろきょろ~」とやっていました。

しばらくたったある晩のことです。おばあさんがいつものようにお経をとなえはじめたところへ、どろぼうが入ってきました。ところが、どろぼうは、何もとらないうちに、びっくりしてしまいました。
そーっと忍びこんだのに「おんきょろきょろ、おでましなさる」。
驚いてあたりをみまわすと「おんきょろきょろ、みまわしなさる」
さては、見つかったかとつぶやくと「おんきょろきょろ、ささやきなさる」
恐ろしくなって、逃げだそうとすると「おんきょろきょろ、おかえりなさる」
どろぼうは、真っ青になって、一目散に外の暗闇へ飛び出していきました。
おばあさんは、おじいさんの残した財産をとられなかったのはもちろん、それからも「おんきょろきょろ~」と唱えながら、幸せにくらしました。

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 2]

むかし、あるところに神父さんと、年とった黒人の召使いがいました。
召使いは、神父さんが子どもの頃から家にいたので、大人になってもまだ子ども扱いをしていました。神父さんが少しでも雨にぬれて帰ってくると「あれあれ、カゼをひくじゃありませんか」とおおさわぎしたり、死にかかっている人をなぐさめに夜遅くでかけようとすると「身体をこわします。朝まで待てないのですか」とぶつぶつ言ったりします。
でも、神父さんは、何をいわれても気にしません。心配してくれる召使いがかわいくてしかたがなかったからです。

ある日のこと。神父さんはニワトリの丸焼きをこしらえるように召使いにたのみました。
ところが、焼いていた召使いは、ニワトリのおいしそうなにおいにがまんができなくなって、足を1本食べてしまいました。そして、足が1本たりないのがわからないように、そっとお皿に乗せて、神父さんのところへ持ってきました。
でも、神父さんはすぐに気がついて、「おまえだね。このニワトリの足を食べたのは」
召使いはちょっとびっくりしました。でも、ちぢれっ毛の頭をふって答えました。
「いいえ、このニワトリは、生きているときから1本足でした」
「私がそんなことを信じるようなバカだと思っているのかね。ほら、おまえの顔に、私が食べましたと書いてあるじゃないか」
「いいえ、だんなさま。トリ小屋には、一本足のニワトリが他にもいます。うそではありません。こんど、そういうニワトリを見つけたら、すぐにお知らせします」
「よろしい、ではそうしておくれ」ということになりました。

しばらくして、昼寝をしていた神父さんのところへ、召使いが飛んできました。
「だんな様、1本足のニワトリが見つかりました。すぐに見に来てください」
神父さんは、ねむい目をこすりながら、トリ小屋へきました。召使いが指さしたほうを見ると、1本足のニワトリがいます。でもそれは、いっぽうの足を羽の下にひっこめているだけです。神父さんは、トリにえさをやるように、トッ、トッ、トッ、トッといいました。
すると、1本足のニワトリは、もう一方の足をおろして、かけてきたではありませんか。
「ほら、ごらん。そんなつくり話で、わしをだませると思っているのかね」
「だんなさま、私はうそつきではありません。だんなさまは、丸焼きのニワトリをお切りになるとき、トッ、トッ、トッ、トッとおっしゃらなかったでしょう。だから、あのとき見つからなかったのですよ」
これを聞いた神父さんは、黒人の召使いのお尻をピシャリとたたいて、神さまにお祈りをしました。
「神さま、このウソつきめを、どうぞお許しください」

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 1]

ある町に、ハンスという名前の男と、そのお嫁さんがいました。
ふたりはそれほど貧乏ではありませんでしたが、ハンスもお嫁さんも、すこしばかり欲張りでした。
「町長さんのように、広い土地とりっぱな家に住みたいな」
「私は、世界で一番りっぱな宝石がほしい。それに、お姫様のように美しくなりたい」
ハンスとお嫁さんは、いつもこんな大きなことを望んでいました。
ある晩のことです。ふたりが、いつものように大きな望みを話しあっていると、ランプがすっーと消えて、赤い光に包まれた一人の女の小人が家の中に入ってきて、鈴虫のようなきれいな声でいいました。
「私は、山奥の水晶御殿に住んでいる魔女のお使いです。あなたたちの願いを3つだけかなえてあげましょう。今日から1週間のあいだに、願いをいいなさい」
小人はこういうとぱっと姿が消え、ランプがひとりでに燃え出し、また家の中が明るくなりました。
ハンスは、にこにこしていいました。
「世界で一番大きな望みを3つお願いしよう」
お嫁さんも、にこにこしていいました。
「1週間も暇があるのですから、ゆっくり考えてお願いすることにしましょう」

ところが、次の日の晩のこと。
ジャガイモをお皿に盛っていたお嫁さんがいいました。
「ジャガイモに、ソーセージをそえたらおいしそうだわ」
すると、とたんに家の中がピカッと明るくなり、1本のソーセージが、ジャガイモの上にのっていました。お嫁さんは、ついうっかり、1番目のお願いを言ってしまったのです。
ハンスはこれを見ると、すっかり腹を立てて、
「なんてバカなことを言ってしまったんだ。お前の鼻に、ソーセージをくっつけてやる」
すると、またピカッと光ったかと思うと、ソーセージがお嫁さんの鼻にくっついてしまいました。こんどは、ハンスが2番目のお願いをしてしまったのです。
ソーセージは、どんなにひっぱってもとれません。そこでハンスはしかたなく、
「小人さん、お願いです。鼻にくっついたソーセージを取ってやってください」
すると、家の中がまたピカッと光り、お嫁さんの鼻についていたソーセージがぽとりと落ちました。
ふたりは、顔を見合わせ、うれしいような、悲しいような顔になりました。
大きいお願いをしようと思ったのに、得をしたのはソーセージ1本だけでした。
小人はもうそれっきり、二度と現われませんでした。

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