児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ

30歳で独立、31歳で出版社(いずみ書房)を創業。 取次店⇒書店という既成の流通に頼ることなく独自の販売手法を確立。 ユニークな編集ノウハウと教育理念を、そして今を綴る。

おもしろ民話集

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 23]

ある日、ヤギが夕立にあって、ずぶぬれになってしまいました。ライオンが窓から、ずぶぬれのヤギを見て「私の家で、雨やどりをしたまえ」と、声をかけました。ヤギは感謝して、ライオンの家へ入りました。

ライオンは「ヤギ君、そこへお座りよ。雨やどりの間、ギターをひいてあげよう」と、ギターの伴奏にあわせて、歌いだしました。

♪ 雨の降る日は 家にいて おいしい肉の おいでを待つのさ……

ヤギは、「おいしい肉」が何なのかわかって、ビックリしましたが、落ちついて言いました。
「ライオンさん、とてもお上手ですね。私にもちょっと、ギターをひかせてくれませんか」
ライオンは上きげんで、ヤギにギターを渡しました。ヤギは、ギターをひきながら、こんな歌をうたいました。

♪ きのう殺した 1万匹のライオン 今日は何匹殺そうか

これを聞いて、ライオンはびっくりしました。そして、奥さんを呼ぶと「おい、たきぎを取ってこい!」奥さんは、雨の中をたきぎ取りとはと驚きました。すると、ライオンは小さな声で、奥さんに「帰ってくるな!」と、ヤギに聞えないように言いました。

ヤギは、今度はもっと大きな声で、♪ きのう殺した 1万匹のライオン…… と、歌います。
ライオンは、今度は息子を呼びました。「森へ行って、お母さんを探して来い」そして、小さな声で「帰ってくるな」とつけたしました。

ヤギは聞えないふりをして、さらにもっともっと大きな声で、♪ きのう殺した 1万匹のライオン…… と、歌います。

ライオンは、もうこわくて、いても立ってもいられません。
「ヤギさん、ちょっと、ウチのやつらを探してくるから、ゆっくり休んでくれたまえ」というが早いか、家から出て行きました。

ライオンがみえなくなったとたん、ヤギはギターを放り出して、いちもくさんに逃げ出しました。

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 22]

むかしある国に王様がいました。王様には3人の王子がいました。となりの国に女王がいました。女王には、一人の美しい王女がいました。
3人の王子は、3人とも王女をお嫁さんにしたいと思っていたので、王様のところへ行き、「ボクたちの中で、誰が王女をお嫁さんにもらってよいかを、決めてください」といいました。

王様は、しばらく考えて、こう答えました。「これから3人とも旅に出て、世界で一番尊いと思うものを探してきなさい。一番すばらしいものを持ってきた者が、王女をもらうということにしよう」

3人の王子は、すぐに出発しました。1番上の王子は、大きな町に着きました。王子は町じゅうを見てまわり、やがて「空とぶじゅうたん」を見つけ、これが一番尊いと思って買い求めました。

2番目の王子は、ある村へ着きました。ひとりの男が長い望遠鏡を売っていました。のぞいてみると、空とぶじゅうたんをかかえて歩いている、1番上の王子が見えました。王子はこれは一番尊いと、この望遠鏡を買い求めました。

3番目の王子は、ある国の市場へ着きました。一人のおじいさんがりんごを売っていました。「病気が治る、ふしぎなりんごだよ。病人の顔を、このりんごでこすると、その香りで病気が治る」と言うのです。その言葉を聞くが早いか、王子はお金を払っていました。

さて、2番目の王子は、望遠鏡でみつけた長兄に追いつきました。そして、長兄の空とぶじゅうたんに乗せてもらい、末の弟を見つけました。今度は、3人とも「空とぶじゅうたん」に乗って城をめざしました。王女はどうしているかと望遠鏡で見ると、何と王女は重い病気にかかっているではありませんか。

3人はすぐに王女に近づき、王女のほほをりんごでこすると、たちまち病気は治ってしまいました。王子たちは王様のところへ行って、それぞれの一番尊いおみやげを見せ、力を合わせて王女の病気を治したことを話しました。

王様はじっと考えた末にこういいました。「息子たちよ、ワシには望遠鏡が一番尊いような気がするが、王女の考えを聞いてみることにしよう」といいましたので、すぐに、みんなで王女のところへ行きました。

「私には、みんな尊いと思います。でも、病気の人を助けてやろうという、3番目の王子様のお気持ちが一番尊いと思います。それに、私は前から3番目の王子様が好きでした」と、ほほを赤らめました。

もう、王女をお嫁さんにした王子は、どの王子だったかわかりましたね。

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 21]

冬が近づいたある日、キツネとカワウソがばったり会いました。すると、キツネが言いました.
「これはいいところで行きあった。どうだい。夜は長いし、これから、お互いに、よばれあいっこをしようじゃないか」         
正直もののカワウソは 「いいとも」 と答えました。キツネが 「よばれるのは、おれが先だぜ」 と言うと、やっぱり 「いいとも」 と答えました。

さっそく次の日、カワウソはたくさん魚をとってきて、キツネを招きました。キツネは、ひょいひょいやってきました。そして腹がはちきれそうになるまで食べると、のったりのったり帰って行きました。

次の日は、カワウソがよばれる番です。カワウソは 「なにを食わせてくれるのだろう」 と楽しみに、キツネのところへ行きました。 
ところがキツネは、なんにもしていません。
「きょうは山の神さまのお使いでいそがしくて、ごめん、あしたね」
カワウソは 「それは、たいへんだったね」 と言って帰りました。
ところが次の日の夜も、キツネは同じことを言うばかりです。「きょうも山の神さまのお使いでいそがしくてね。神さまの言いつけだもの、しかたがないんだ」
カワウソは、キツネのうそに気がつきました。でも、腹をたてずに、「それはたいへんだったね」 と言って帰りました。

さて、次の日、キツネがやってきて、カワウソにたのみました。
「あしたは、きっとよぶから、魚のとり方を教えてくれないか」
カワウソは、ちょっと考えてから答えました。
「ああ、そんなこと簡単だよ。夜なかに川に行って、しっぽを水にひたしておくんだ。すると、魚が寄ってきて、しっぽに食いつくんだ。うんと食いつかせておいて、しっぽを持ち上げればつれるよ」
これを聞いたキツネは 「ふん、魚のとり方のひみつを教えるなんて、カワウソもばかなやつだ」 と笑いながら帰って行きました。そして、夜おそく川へ行くと、しっぽを水につけました。しばらくすると、しっぽの先になにかがぴたっとくっつきはじめました。 「しめしめ、魚がどんどん食いついてくるわい」 キツネは、むねをわくわくさせながら、そっと、しっぽをもちあげてみました。もう、もちあげられないほどです。キツネは、もっと、もっとと、がまんしました。

やがて、夜が明けてきました。
キツネは、そっと、おしりをもちあげました。ところが、しっぽは動きません。
「うふふ、こいつは大漁だぞ。よし、いっぺんにつりあげてやれ」
キツネは 「そ一れっ」 と、しっぽを引きあげました。ところが、しっぽがちぎれてしまいそうで、思わず悲鳴をあげました。はじめにぴたっ、ぴたっと食いついたのは、川の水がこおった氷のかけらです。そして、夜明けになると、きつねのしっぽにかみついたまま、川じゅうの水がこおりついてしまったのです。
「こいつは、こまったぞ、人間に見つかったら、キツネ丼にされてしまう」
キツネは、なんども、おしりをもちあげたり、おろしたりしていましたが、とうとう、しっぽの皮をひんむくと、いててて…いててて…、泣きべそをかきながら山へ帰っていきました。

たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 20]

昔あるところに、ジャンというロバを飼っている男がいました。ある日のこと、ストーブに燃やす薪をとろうと、木に登りました。木の下ではロバがいました。そこへ、馬に乗った見知らぬ人が通りかかり、ジャンにこういいました。
「おーい、そこの人! 木を切ったことはないのかね?」
「何だと? おれがこれまで切った木を全部あわせりゃ、りっぱな森ができるくらいだ」 と、ジャンは叫びかえしました。
「おまえが切ろうとしてる枝を切ったら、地面におっこちるぞ!」
「何をほざく。お前こそ、木の切りかたについちゃ、何にもわかっちゃいないんだ」

それを聞くと、男はいってしまいました。ところが、まもなくミシミシッという音とともに、ジャンは枝もろとも、地面におっこちてしまいました。(おやおや? さっきのヤツはすごい男だ。言った通りになったんだからな。もしかしたら、あの人は予言者にちがいない。あとを追って、聞いてみることにしよう) ジャンは、ロバに乗って、あの男を追いかけました。すこしすると、さっきの男が、ゆっくり馬を走らせています。

「先ほどは失礼しました。あなたさまは、予言者ですね。すみませんが、ひとつだけお尋ねしたいことがあります。私は、いつ死ぬんでしょう」 「それは簡単なこと。あんたは、そのロバがくしゃみを3回したら死ぬよ」 というと、男は行ってしまいました。

(ハハァ、おれのロバはくしゃみなんて1度もしたことはない。ということは、おれは長生きできるってことだな) ジャンは、とても幸せな気分になって、家路につきました。ところがどうしたことでしょう。ロバがトコトコ歩きだしたとき、口を大きくあけると 「ハックショーン」 と、大きなくしゃみをしたのです。ジャンはびっくりぎょうてん。ロバからおりると、両方の手をロバに押し当てました。発作がおさまったようなので、また家へ帰ろうとしましたが、ロバに乗って行く気になれません。乗るかわりに、ロバがくしゃみをしそうになったらやめさせようと、ロバの脇を歩きました。

しばらくして、ジャンは耕したばかりの畑のそばを通りました。ジャンは立ちどまり、豊かな茶色い土を感心しながらながめ、来年にはどんなにかみごとな小麦がとれるだろうと、うっとりとしました。そのとき、「ハックショーン!」 ロバが2度目のくしゃみをしたのです。ジャンはかぶっていた帽子をぬぐと、ロバの鼻をしっかり押さえました。(ああ、あと1回くしゃみしたら、おれは死んじまう。あの男は悪魔だったんだ)

ジャンは、いいことを思いつきました。丸い小石をひろい、ビンの口にコルクの栓をするように、ロバの両方の鼻に小石でフタをしたのです。(そうーら、くしゃみが出きるものならしてみろ!) すると、「ハックショーン!」ロバの鼻から小石が鉄砲玉のように飛び出して、2つの小石がジャンの顔に命中したのです。「あっ!」 ジャンは叫びました。「おらは死んじまっただぁー! オジャンになったー!」 といったまま、道路に伸びてしまいました。

 たまには子どもと添い寝をしながら、こんなお話を聞かせてあげましょう。 [おもしろ民話集 19]

むかし、あるところに、一人の金持ちの農夫がすんでいました。何不自由なく暮らしていましたが、まだ奥さんがありません。そこで、友だちにすすめられるままに、ある貧しい騎士の美しい娘を、奥さんにもらいました。
ところが、農夫はまもなく心配しだしました。(騎士の娘が農夫の女房になりきれるかな。おれが畑に出ている間に、だれかが言いよるかもしれない。そうだ、朝起きたら、あれを思いきりぶったたいてやろう。そうすりゃ、一日中泣いているだろうから、まさか泣いてる女を誘惑する者もあるまい。夕方帰ってから、あやまればいい)と、思いつきました。

翌日、朝ごはんがすむと、農夫は奥さんを思い切りなぐり、さっと畑に飛び出していきました。奥さんは一日中涙にくれ、訪ねてきた人も、これを見るとすぐに引き返していきました。夕方、農夫は奥さんの前にひざまずいて、心からわびました。

こんな日が続いていたある日、奥さんが嘆き悲しんでいるところへ、王様の家来が、白馬にまたがってやってきました。
「私たちは王様のいいつけで、名医をさがしているのです。じつは、お姫様ののどに魚の骨がつきささって、もう1週間にもなるのです」
これを聞いた奥さんは、主人に仕返しをするいいチャンスだと思いました。
「それは、よいところへおいでくださりました。私の主人は農夫ではありますが、医者としてもよい腕を持っています。でも、主人はちょっと変わっていまして、こん棒でぶたれないと、病人をみようとしませんの」
王様の家来は、これを聞くと大喜びで、農夫を王様の前へ連れてきました。

「先生、あなたの腕で、姫の病気をぜひ治してやってください」 と、王様の合図で、こん棒の嵐が農夫にそそがれました。
「なおします、なおします、お姫様のご病気を…。どうか王様、ストーブの火をどんどんたいて、しばらくの間、私とお姫様の二人きりにさせてください」 王様は、農夫の言うとおりにしました。

農夫はお姫様をストーブのそばのイスに座らせると、自分は床にすわりこんで、着物をぬぎました。そして、長いつめで体じゅうをひっかきまわし、腕を振りまわしては、ヘンテコリンな顔をしてみせました。そのようすがあんまりおかしかったので、お姫様は思わずふきだしてしまいました。その拍子に、のどに引っかかっていた魚の骨も飛び出しました。

王様は、お姫様の病気が治ったお祝いに、大きな宴会を催しました。その宴会には、国じゅうの病人という病人が集まりました。みんな、口々に悪いところを訴えました。王様は、家へ帰ろうとする農夫を呼びとめると、こう申しわたしました。
「この病人たちもすぐになおしてやってくれ」「こんなに大勢では、とても一度には……」 といったとたん、こん棒をもった家来がやってきます。農夫はふるえあがって 「すぐ、すぐになおしま~す」

農夫は、またも広間のストーブをかんかんにたいてもらいました。そして、病人たちにこういいました。
「お前たちを一度に治すのは大変なことだ。そこで、おまえたちのうちで一番の重病人をこのストーブで焼いて灰にする。その灰を飲めば、ほかの病人はたちどころに治るというわけじゃ。だから、だれかひとり犠牲になってもらわねばならん」

病人たちは、おたがいに顔を見まわせて、しりごみするばかりです。そこで農夫は、近くにいた一人に言いました。
「おまえが一番の重病人らしいな」 「いえいえ、私の病気はすっかりよくなりました。この通り、ぴんぴんしています」 というが早いか、広間から飛び出していきました。

そうです。誰ひとりとしてストーブに投げこまれようという病人はいません。みんな、治ったような顔をして逃げ帰っていきました。

王様はすっかり喜んで、農夫にほうびのお金をたくさんあげました。大金持ちになった農夫は、畑へ出かける必要がなくなりました。そのため、奥さんをなぐるどころか、とても大切にしたということです。

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