児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ

30歳で独立、31歳で出版社(いずみ書房)を創業。 取次店⇒書店という既成の流通に頼ることなく独自の販売手法を確立。 ユニークな編集ノウハウと教育理念を、そして今を綴る。

心の子育て論

「読み聞かせ」のすすめ 13

病院の待合室で、子どもに本を読み聞かせる母親と、耳をかたむける子ども。この母と子の姿には、2つの型があります。

子どもが、待合室に備えつけの本の中から1冊をぬいてきて「これを読んで」という。すると母親は「これ、この前読んであげたでしょ」と答え、子どもは、他の1冊を持ってくる。ところが、さあ読み始めた母親にはまったく真剣さがない。字面を棒読みするだけ。子どもも、真剣に耳を傾けることをせず、母親が読み終わらないうちにどんどんページをめくり、最後のページへくるのを待つようにしてパタンと本をとじ、他の本と取りかえてくる。そして、また同じ繰り返し。子どもには、始終、落ち着きがない。──これが、一つの型です。

子どもが本を持ってくる。すでに2度も3度も読み聞かせた本であっても、母親は「○○ちゃんは、この本がすきなのね」といって、まるで初めて読むようにして、ゆっくり、心をこめて読み聞かせていく。子どもは母親に体をよりかからせたまま、身動きひとつしない。読み終わると、「おもしろかったね」「ほんとに、かわいそうなお話ね」などと声をかけ、子どもはこくんとうなずいて、静かに本を返しにいく。──これが、もうひとつの型です。

これを見ていて「やはり、そうだ」と思わされるのは、読み聞かせにしても、日常での母と子の心の通い合わせが、どんなに大切かということです。

「読み聞かせ」のすすめ 12

ある公立図書館司書のお話です。

その図書館では、週に2回、午後3時半から絵本の読み聞かせを行なっていますが、いつも10~15人ほど集まる子どものなかで、一人の女の子が目をひくようになりました。千香ちゃんという5歳の子です。

読み聞かせが終わると、子どもたちは、すぐに立ち上がって散っていきます。ところが、千香ちゃんだけは立ちません。きまって、2、3分は、ぽつんとすわっています。そして、ときには、読み聞かせた司書のところへやってきて、「このおとこの子(絵本の主人公)は、ほんとうは、やさしいんだよね」「きつねが悪いんじゃなくて、人間が悪いんだよね」などと、つぶやきます。

ある日、千香ちゃんがお母さんといっしょにやってきました。そこで、千香ちゃんの読み聞かせの終了後のことを話してみました。すると、すっかり、なぞがとけました。家で母親が読み聞かせたあとは、「おもしろかったね」「かわいそうだったね」などと語りかけながら、静かな時間をすごすようにしているのだそうです。

そして、その母親はさいごに「その、4、5分がとっても大切なような気がします。一つのお話を通して、親と子の心がひとつに溶けあえたのですから、あんな気持ちになれるのは、本のほかにありません」と語ったそうです。

「読み聞かせ」のすすめ 11

週のうち4日をパートで働く33歳の主婦の話です。

「私の、3歳と5歳の子どもへの読み聞かせは、月に2回です。第1と第3の日曜日の午後1時から3時まで。12時半に家を出て、帰ってくるのは3時半。場所は家からバスで20分ほどのところにある図書館の児童室。児童室の片隅にすわって、まず、2人の子どもを前にかみしばいの熱演をはじめます。そばにいるよその子も集まってきます。ますます熱が入ります。

かみしばいが二つ三つ終わると、それから、2人の子が自由に選んできた本を、かわりばんこに読みます。私がまん中、両わきに子ども。声を出して読むのが最初ははずかしかったのですが、およそ10か月たった今はもう平気。絵本が主ですから、1時間半で6~7冊。すでに読み聞かせた絵本でも、子どもが持ってくれば『このお話が好きなのね。お母さんも好きよ』といって、何度でも読みます。

こうして3時になると、本をきれいに片付け、カウンターの前に行って母子3人声そろえて「ありがとうございました」と礼を言って帰ってくるのです。今の私にとって、こんな楽しい時間はありません。この前は『あなた方が<ありがとうございました>といってくれるものだから、ほかの子どももそういってくれるようになりました』と、図書館の人によろこばれました」

すてきな読み聞かせですね。形にとらわれない、こんな自由な読み聞かせもあるのです。

「読み聞かせ」のすすめ 10

母から子への「読み聞かせ」をはじめてから1年7か月という方からうかがった話です。

「子どもが、心のやさしい思いやりのある人間に育ってほしいという願いで、4歳の長男を相手に絵本の読み聞かせを始めました。子どもが、夜、床に入ったときとか、雨で外へ遊びに行けないとき、私のパートの休みの日など、時間や場所はきちんと決めずに、自由にしました。
ところが半年ほどして、まったく思いがけないことが起こりました。起こったという言い方はちょっと変かもしれませんが、母親の私の方が、すっかり絵本のとりこになってしまったのです。すぐれた絵本は、りっぱな文学作品にも匹敵するというのはほんとうなのですね。
「かさ」「ちからたろう」「しずかなおはなし」「てぶくろ」「こぐまのぼうけん」「もちもちの木」……、題名をあげたらきりがないほどです。子どもに何かを伝えると同時に、私自身がどんなにたくさんのことを学んだことでしょうか。
今、わが家の居間には80冊ほどの絵本が並んでいます。わが家のいちばんの宝ものです」

子どもといっしょに自分の心が高まっていくよろこび──これこそが、「読み聞かせ」のダイゴ味ではないでしょうか。

「読み聞かせ」のすすめ 9

子どもへの読み聞かせは、毎日ではなくても、週に1、2回、少しの時間があればできます。しかし、これを1年、2年、3年も継続するには、それなりの意志が必要です。

そこで、読み聞かせを始めてはみたものの、子どももなかなか静かに聞いてくれないし、もうやめてしまおうかと思いはじめたお母さんに、すすめることがあります。それは、半日が無理なら2、3時間でもよいですから、子どもの本を備えた公共図書館か公民館、あるいは近くの家庭文庫などへ足を運んで、子どもの絵本をできるだけたくさん読んでみることです。絵本であればわずか2、3時間でも20冊くらいは読めます。公共図書館などがなければ、子どもの通う学校図書館でも、わけを話せば見せてくれるはずです。

こうして、自分自身が、まず絵本の世界にひたってみることです。すぐれた絵本は、必ずおとなの心をも打ち、絵本の素晴らしさに気づかせてくれます。

もしも、この図書館通いを2、3回も続けることができれば、何とかして読み聞かせをつづけてやろうという気持ちになるのは、もう間違いありません。子どもの豊かな成長を願う親なら、このくらいの努力も必要でしょう。

読み聞かせが長続きしないのは、子どもが悪いのではなく、絵本を好きになっていない親の側に責任があるのだということを自覚してください。

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