児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ

30歳で独立、31歳で出版社(いずみ書房)を創業。 取次店⇒書店という既成の流通に頼ることなく独自の販売手法を確立。 ユニークな編集ノウハウと教育理念を、そして今を綴る。

レディバード特選100点セット


本日掲載したグリム童話「おおかみと7ひきの子やぎ」は、英国レディバード社とのタイアップ企画「レディバード特選100点セット」の1点に収録されていますので、レディバッドブックスの絵と、該当部分の日本語訳を紹介してみましょう。



 




7ひきこやぎ4.5
昔、7ひきのかわいい子やぎのいる、母やぎがいました。子やぎをみんな、愛情をこめてかわいがっていました。ただ一つ恐れていたことは、いつか、おおかみが子どもたちを捕えてしまうのではないかということです。ある日母やぎは、食べものをさがしに森の中へ入っていかなければなりませんでした。出かける前に彼女は、7ひきのかわいい子やぎを呼び寄せました。




7ひきこやぎ6.7
「かわいい子どもたち」 と、彼女は言いました。「私がいない間は、おおかみが近くにこないように注意しなさい。ドアには鍵をかけておくの。もし、おおかみが入ってきたら、あなたたちはみんな食べられてしまうからね。変装してくるかもしれませんが、ガラガラ声とまっ黒な足で、おおかみだということがわかるでしょう」

子やぎは答えました。「お母さん、心配しないでちょうだい。私たちはよく気をつけます」そこで、母やぎは子やぎを家に残して森へ入っていきました。






7ひきこやぎ8.9
ドアがノックされるまでには、長くかかりませんでした。誰かが大声で叫びました。「子どもたちや、おかあさんのためにドアを開けておくれ。みんなにおみやげを持ってきたよ」
しかし子やぎたちは、そんなガラガラ声がお母さんの声であるはずがないとわかっていました。「ドアなんか開けないよ」と、みんなで叫びました。「おまえは、お母さんじゃないよ。お母さんは優しい声をしているけれど、おまえの声はガラガラだもの。おまえはおおかみだ」






7ひきこやぎ10.11
そこで、おおかみは店に行ってチョークをひと固まり買いました。声を優しくするために、それを全部食べてしまいました。彼はそれからやぎの家にもどって、ドアをノックしました。

「子どもたちや、お母さんのためにドアを開けておくれ。みんなにおみやげを持ってきたよ」と、おおかみは優しい声で言いました。






7ひきこやぎ12.13
おおかみは話しながら、窓のさんに黒い足をのせました。子やぎたちは優しい声を聞いて、最初のうちはお母さんの声だと思いました。そのとき、黒い足が見えたので叫びました。「ドアなんか開けないよ。おまえはお母さんじゃない。お母さんは黒い足をしていないよ。おまえはおおかみだ」







7ひきこやぎ14.15
この言葉を聞いて、おおかみはパン屋に走りました。「私は足にけがをした」 と、おおかみは言いました。「足に生パンをこすりつけてくれ」

パン屋はおおかみがこわかったので、言われたとおりにしました。






7ひきこやぎ16.17
次におおかみは粉屋に走りました。「小麦粉を私の足にふりかけてくれ」 と言いました。
粉屋は思いました 「おおかみは誰かをだましたいと思っているな」 そこで、彼は断りました。すると、おおかみは、「私の言うとおりにしないと、おまえを食べてしまうぞ」。 それで粉屋は恐ろしくなって、おおかみの足に小麦粉をふりかけました。






7ひきこやぎ18.19
おおかみはやぎの家にひきかえすと、3たびドアをノックしました。「子どもたちや、お母さんのためにドアを開けておくれ」 と、彼は言いました。「みんなにおみやげを持ってきたよ」

子やぎたちは優しい声を聞きましたが、まだ警戒していました。「はじめに足を見せてちょうだい」 と叫びました 「私たちにお母さんかどうかわかるように」






7ひきこやぎ20.21
おおかみは窓のさんに足をのせました。子やぎたちは白い足を見ると、ほんとうにお母さんだと思いました。彼らはドアを広く開けました、すると、そこにはおおかみが立っていたのです。






7ひきこやぎ22.23
子やぎたちは、恐れおののき、身をかくそうと走りました。1ぴきは机の下にかけ込み、2ひき目はベッドの中にとび込み、3びき目はストーブの中に、4ひき目は台所に、5ひき目は戸棚に、6ひき目は洗い桶の下に、そして7ひき目は時計の中にとび込みました。




7ひきこやぎ24.25
おおかみが子やぎたちを見つけるのには、たいして時間がかからず、次から次と、できるだけ速く子どもたちを飲み込んでしまいました。時計の中にかくれていた1番年下の子やぎだけが、おおかみに見つかりませんでした。

6ひきの子やぎを飲み込んでしまうと、おおかみは眠くなりました。彼は牧草地にはいり、木の下に横になって、すぐにぐっすり眠ってしまいました。




7ひきこやぎ26.27
まもなく、母やぎが森から家へ帰ってきました。なんという光景が目にうつったことでしょう。家のドアは広く開いたままでした。テーブルもいすもひっくり返されていました。洗い桶は粉々にこわれていました。枕もふとんもベッドから引きずりおろされていました。




7ひき28.29
母やぎは7ひきの子やぎをさがしましたが、どこにも見つかりませんでした。それで絶望して、彼女は子やぎの名前を1ぴきずつ呼びました。最後に7番目の子やぎの名前を呼ぶまで、誰も答えませんでした。彼女がその名前を呼ぶと、小さな声が答えました。「お母さん、私は時計の中よ」




7ひき30.31
大喜びで、彼女は小さい子やぎを時計の中から出してやりました。子やぎは、どのようにしておおかみが他の6ひきの子やぎを食べてしまったのかを、話しました。その悲しい話が終ると、母やぎと7番目の子やぎはいっしょに泣きました。




7ひき32.33
しばらくして、かわいそうな母やぎは、かわいい子やぎを連れて外に出て、悲しげに牧草地をさまよいました。そこには、木の下で、おおかみがぐっすり眠っていました。たいへん大きないびきをかいていたので、木の枝がふるえるほどでした。




7ひき34.35
母やぎは眠っているおおかみのまわりを歩き、大きなふくれたお腹を見ました。もっとよく見ると、何かがおおかみのお腹の中で動き、もがいているように思えました。

「これはこれは」 と、彼女は叫びました。「おおかみの飲みこんだ子やぎたちが、まだ生きているのかしら」




7ひき36.37
「すぐに家にもどりなさい」 と、母やぎは7番目の子やぎに言いました。「はさみと針と糸を持ってきておくれ」

それから、母やぎはおおかみのお腹を切り開きました。はじめに少し切ると、1ぴきのかわいい子やぎの頭がひょいと出てきました。




7ひき38.39
彼女がおおかみのお腹をさらに切っていくと、もう1ぴき、またもう1ぴきというように、子やぎたちがとび出しました。とうとう、6ぴき全部が生きたまま自由になりました。どれも傷ついていませんでした、というのも、おおかみは食い意地がはっていたので、子やぎたちを丸のみにしてしまったからです。




7ひき40.41
子やぎたちはまたみんないっしょになれて、なんと幸せだったことでしょう。かわいそうな母やぎはまた泣きましたが、こんどは嬉し泣きでした。7ひきの子やぎたちは幸せそうに、眠っているおおかみのまわりをとんだりはねたりしました。




7ひき42.43
しかし、すぐに母やぎはみんなに話しかけました。「大きな石をさがしてきなさい。そして、それを私のところに持ってきなさい」

そこで、7ひきの子やぎたちは見つかるかぎり大きな石をさがし、それをおおかみが寝ているところへ持ってきました。




7ひき44.45
母やぎはできるかぎり多くの石を、おおかみのお腹の中に入れました。それから、すばやくお腹を縫い合わせました。おおかみはその間じゅう大いびきをかいて寝ていて、何が起ったのかわかりませんでした。




7ひき46.47
とても長いこと眠った後、おおかみは目を覚まし、のどがかわいていたので水を飲もうと井戸の方に行きました。彼が歩くにつれて、お腹の中の石がお互いにぶつかり合って、ゴロゴロ音をたてました。それで、おおかみは叫びました、

「何がゴロゴロ鳴ったりころがっているのだろう。私のあわれな体の中で。私は6ひきの若い子やぎを食べたのに。彼らは6つの石みたいだ」




7ひき48.49
おおかみはよろけながら、またゴロゴロ音をたてながら、長い時間かかって井戸に着きました。水を飲もうと身をかがめると、お腹の中の重い石が、彼をぐらつかせました。おおかみはボチャンとびっくりするような音をたてて、井戸の中にまっさかさまに落ちてしまいました。

やぎと子やぎたちは、びっくりするようなボチャンという音をきくと、井戸にかけていきました。おおかみがおぼれてしまったのを見て、大喜びでした。

「おおかみが死んだ。おおかみが死んだ」 と叫びながら、みんなでとびまわりました。母やぎが森に行くとき、もう、子やぎたちをおいていくのをこわがる必要はありませんでした。



1987年に刊行した英国レディバード社とのタイアップ企画第3弾、「レディバードブックス特選100点セット」のうち、フランスの作家ジュール・ベルヌ(18428-1905)の「80日間世界一周」の第8回目、最終回。

●「80日間世界一周」全文 その8


80日間22


フォッグはリバプールに上陸したとき、安心だと思いました。ロンドンには6時間で着くし、まだ9時間残っていたからです。
そのとき、彼は肩に誰かの重たい手がおかれるのを感じました。
「女王陛下の名においてあなたを逮捕します」 フィックス刑事が言いました。
パスパルトゥーはこぶしをあげましたが、警官にその腕を押さえられ、フォッグは税関の独房に押しこめられてしまいました。
哀れなパスパルトゥーはアウダにことのすべてを話しました。彼はすべての責任は自分にあると思いました。フィックスのことを主人に言いさえしていたら!
フィリアス・フォッグは独房にすわり、秒針が時を刻むのを見ていました。まさに最後の日というときに負けるなんて、とても信じがたいことでした。2時33分、独房のドアが勢いよく開き、パスパルトゥー、アウダそしてフィックスがかけこんできました。
「閣下」 フィックスは口ごもって言いました 「まちがえておりました。本当の泥棒は3日前に捕えられていました。あなたは無罪です!」
フィリアス・フォッグはゆっくり立ちあがりました。静かにフィックスの方へ歩いていき、刑事の目をじっとのぞきみました。それから、すばやいパンチでフィックスをなぐり倒しました。
「いい当りです、旦那様!」 パスパルトゥーは笑いました。
フォッグは、最高速度でロンドンへ向けて出発する特別列車をあつらえました。しかし列車が煙をあげて駅に入ったとき、ロンドンの時計は9時10分前を示していました。世界をひと周りしてきて、フィリアス・フォッグは5分間だけ約束の時間に遅れてしまいました。彼は賭けに負けたのです。
3人の旅行者は、うなだれてフォッグの家にもどってきました。ほとんど話をかわしませんでした。みんなフィリアス・フォッグが賭けに負けたことをわかっていたからです。


80日間23


自分を責めていたパスパルトゥーは、アウダの部屋に行きました。「奥様」 彼は懇願しました 「どうかフォッグ氏をなぐさめてあげてください。彼は私をどこかへやってしまいます」
フィリアス・フォッグがアウダのために考えた計画を話しにきたとき、彼女は彼に言いました 「もし私をお助けにならなければ、もっと時間がおありだったのに」
「ご安心ください」 フォッグは言いました。「私に何が起ころうとたいしたことはありません。心配してくれるような家族はいませんから」
「かわいそうに」 アウダはため息をつきました。「つらいことは、わかちあえばもっと楽に耐えられますわ」
「そう言いますね」 とフォッグが答えました。
「それならどうか、私とあなたの悩みを分ちあってください」 アウダは言いました。「私をあなたの妻にしていただけませんか」
「願ってもないことです」 フォッグは答えました。すぐに彼はパスパルトゥーを呼び、彼に結婚式の準備をするように言いました。
「いつ式をあげるのですか。旦那様」 と、彼はたずねました。彼はその知らせを喜びました。「明日、月曜日だ」 幸せいっぱいのフィリアス・フォッグが答えました。
これ以上速くは走れないという速さで、パスパルトゥーは牧師の家へ走っていきました。「お願いします、牧師様」 彼は息を切らして言いました
「私の主人、フィリアス・フォッグ氏の結婚の手はずを、明日の月曜日に整えていただけますか」
「いえ、いえ、あなた」 牧師は言いました。「明日は日曜で、月曜ではありませんよ。今日は土曜日ですから」
「今日が土曜日ですって」 パスパルトゥーはあえいで言いました。牧師がびっくりしているのをよそに、パスパルトゥーは大急ぎで部屋をとびだし、通りへ出ていきました。フォッグ氏の部屋へかけこむと、パスパルトゥーは叫びました 「急いでください、旦那様。私たちは勘ちがいしていました。
今日は土曜日です。賭けに勝つのにまだ10分間残っています」


80日間24


フォッグはぼう然としました。自分がまちがえるはずはない、と。彼は毎日きちんと数えていました。はっとそのとき気づきました。彼は東へ旅行したので、時計を直すべきだったのです。経度15度旅行するごとに、彼は1時間時計をもどさなければなりませんでした。世界を一周すると、つまり彼は24時間得したことになります。まる1日です。彼はとびはねていきました。
12月21日の土曜日の夕方、友人のグループはリフォームクラブにおちあっていました。フォッグの80日目の日でした。彼らは、彼の旅行に関する最近のニュースを知りませんでした、まだ生きているのかさえ知る人はいませんでした。
「8時20分だ」 1人が言いました。 「リバプールからの最終列車はもう到着しているはずだ。なのに彼は、まだここには現れない!」
「そんなに早くこないさ」 もう1人が言いました。「フィリアス・フォッグという男は、非常に時間に正確な男だからね。9時15分前まで、我々は安全とは言えまいよ」
1分2分と時は刻まれていきます。秒針が最後の1分をすべっていきました。時計は8時45分を鳴らしはじめました。ドアが大きく開きました。
「私はここだ。諸君」 フィリアス・フォッグは言いました。彼のうしろには興奮した人びとが集まっていました。
いかなる危険をもくぐり抜けて、彼は80日間で世界を一周したのです。彼は時間との競争に勝ちました。賭けに勝ったのです。それに加えて、彼はアウダという女性にめぐり会えました。フィリアス・フォッグは世界一幸福な男でした。

以上で、「レディバードブックス特選100点セット」の項を終了します。

1987年に刊行した英国レディバード社とのタイアップ企画第3弾、「レディバードブックス特選100点セット」のうち、フランスの作家ジュール・ベルヌ(18428-1905)の「80日間世界一周」の第7回目。

●「80日間世界一周」全文 その7


80日間19


長くて寒い夜でした。雪でおおわれ、凍りついたこの地に太陽がのぼるころ、銃声がきこえました。そして、ついに行進する男たちの一群があらわれたのです。フィリアス・フォッグが、いなくなった乗客と兵隊たちの先頭に立っていました。まもなくアウダは、フォッグとパスパルトゥーに再会できたのです。彼女はフォッグがスー族と戦いぬいて、どのようにパスパルトゥーと乗客を捜し出したか聞きました。勇敢なパスパルトゥーは素手で3人のインディアンをなぐり倒したのでした。
フォッグは列車が彼らをおいて出発してしまったことに怒りました。
「24時間の遅れだ」 と、彼は言いました。「私は12月11日にニューヨークにいなければならない。汽船がそこから、その夜の9時にリバプールに向けて出航することになっているのだ」
そばに立っていた1人の男がこの話をききました。彼は、大きな帆とハガネのすべりで走る帆走そりで目的地まで連れていってあげよう、と申し出ました。フォッグは喜んで頼むことにしました、そしてすぐに氷まじりの風がフィックスを含む一行を、飛ぶように凍てつく雪の上を通って運んでいきました。
一行は、ニューヨーク行きの列車が駅で待っている町へとやってきました。彼らは乗りこみ、フォッグは運転手に話しかけ、「全速力で前進」 と命令させました。平原と町々がみるみるすぎていきました。12月11日の夜11時すぎに、列車はニューヨークに到着しました。しかしおそすぎました。リバプール行きの汽船はもう出てしまったあとだったのです。
負けてたまるかと決意して、フォッグは波止場へ急ぎました。そこで、彼はちょうど出航しようとしている小さな貨物船をみつけました。
「どこまで行くのです?」 彼は船長にたずねました。


80日間20


「フランスのボルドーさ」 というのが答でした。
「私と3人の友人をリバプールへ連れていってくれたら、たんとはずむがね」 フォッグは言いました。
「わしはボルドーに行くのだ」 船長は言いはりました。「そこへなら連れていくさ」
「わかった」 フォッグは承知しました。
1時間後、フォッグと彼の友人は、フィックスも加えてニューヨークから出港したのです。しかし、フォッグはフランスへ行くつもりはありませんでした。 彼には計画がありました。密かに彼は船乗りたちにその計画を話し、お金をはずんでおきました。まず彼は船長を船室に閉じこめました。そうして自分が船の指揮をとるようにしたのです。
すべてがうまく運んだように思われたとき、強風が吹きはじめました。フォッグは帆をおろすようにと命じました。スピードを保つために、かまどにどんどん石炭がくべられました。どす黒い空の下で、巨大な波がこの小さな船をおそってきました。ロンドンに到着せねばならない5日前、フィリアス・フォッグは、いまだ大西洋のまん中にいたのでした。そこへ船の機関士が悪い知らせを持ってきました。
「石炭がもうほとんどありません」 あえぎながら彼は言いました。「減速しなくてはいけません」
「今はだめだ」 フォッグは答えました。「全速力で進むのだ」 それから彼は、船長をブリッジ (船長の指揮する場所) まで連れてくるように命令しました。船長は鎖をはずされたトラのようにかんかんに怒っていました。


80日間21


「海賊め!」 彼はどなりました。「わしの船をぶんどったな!」
「ぶんどった?」 フォッグは言いました。「私はこの船を買いたいのですよ」
「売るものか!」 船長は声をとどろかせて言いました。
「だが燃やさなくてはならないのだ!」 フォッグは続けました。
「燃やすだと!」 船長はあえいで言いました。「この船は5万ドルの値うちがあるのだぞ!」
「では6万ドルだしましょう」 フォッグは落ち着いて言いました。それは船長には断れない取引でした。彼は承諾し、この小さな船が全速力で進むように仲間に加わりました。石炭がなくなったとき、彼らは甲板をはぎとり、その木を燃やしました。燃えるものは、すべてかまどの燃料にされました。
12月20日の夕方、彼らはアイルランドの南に来ていました。
今や、フィリアス・フォッグがロンドンに着いて賭けに勝つのに24時間しか残されていません。彼らがコーク港に上陸すると、急行列車がリバプール行きの船の出るダブリンへと彼らを乗せていきました。

1987年に刊行した英国レディバード社とのタイアップ企画第3弾、「レディバードブックス特選100点セット」のうち、フランスの作家ジュール・ベルヌ(18428-1905)の「80日間世界一周」の第6回目。

●「80日間世界一周」全文 その6


80日間16


パスパルトゥーはこの遅れにいら立ちました、しかし、フィリアス・フォッグの気分を妨げるものは何もありませんでした。彼は長い間トランプをしてすごしました、まるで時間など気にならないかのように! やっと列車が動きだせるようになったとき、雪が降りはじめました。パスパルトゥーはふたたび心配になりました、まもなく平原が雪でおおわれることを知っていたからです。大雪は線路をこわし、この冒険を終らせてしまうことにもなりかねません。
3日目の朝、列車は突然また止まりました、パスパルトゥーは、何が起きたのか見にいきました。
「いや、川は渡れないよ」 彼は信号係がそう言うのをききました。「列車が通れるほどあの橋はがんじょうじゃない」
機関士は止まっていたくありませんでした。「通らせてくださいよ」 彼は頼みました。「全速力で走れば、飛ぶように渡れれまさぁ!」
彼は列車を少しうしろにもどすと、すぐにスピードをあげて前進しました。エンジンは、悲鳴のような音をあげました。列車もガタガタ揺れました。スピードはどんどんあがりました、時速60マイル、80マイル-100マイルまでも! 車輪は線路に触れていないように見えました。そして電光のように川の上を通りすぎたのです。最後の車両が反対側の岸に着くやいなや、橋は濁流の川へくずれ落ちてしまいました。


80日間17


次の日、またもや危険がおそってきました。スー族のインディアンの一群が列車をおそい、あたりは野蛮な叫び声とライフルの火花でいっぱいになりました。
100人ものインディアンが列車のそばを疾走し、何人かは列車に飛び乗ってきました。乗客もピストルで応戦しました。
スー族の酋長は馬から機関車に飛び乗りました。彼は機関士と助手をなぐり倒して、そしてハンドルを回して列車を止めようとしたのです。
しかし、機関車はさらに早く音をたてて走っていきました。ハンドルを逆の方向に回してしまったのです。
「列車を止めなければ」 フォッグはドアの方にむかいながら叫びました。「いけません、旦那様」 パスパルトゥーは叫びました。「私が行きます」
インディアンにみつからないように、彼は客車からぬけだし、走っている列車の下へもぐりこみました。ゆれる鎖にしがみつき、機関車に着くまで前に進みました。彼がすぐに機関車を客車から切り離したところ、列車はゆっくりスピートを落しはじめました。
客車が駅に近づいたとき、乗っていたインディアンたちは、プラットホームに兵隊がいるのに気づきました。そして、列車からとびおりて逃げていきました。


80日間18


駅に着いて、機関車が運転手と助手を乗せたまま、遠くへ消え去ってしまったことがわかりました。パスパルトゥーと2人の乗客もまた、いないことがわかりました。
「インディアンが彼らを連れていってしまったのです」 アウダがため息をついて言いました。
「私が勇敢なパスパルトゥーと乗客たちをみつけてきますよ」 フィリアス・フォッグは彼女に言いました。何人かの兵隊といっしょに、彼はインディアンを追って出発しました。
アウダとフィックスは他の乗客たちといっしょに駅で持っていました、すると突然警笛がきこえました。そしてうれしいことに、機関車が線路の上をもどってくるのが見えたのです。機関士は彼と助手が意識をとりもどしたとき、スー族の酋長は逃げていて、機関車も止まっていたと話しました。また、機関車の中の火も燃え尽きていたことがわかりました。2人はもう一度火をたき、客車を求めてもどってきたのです。乗客はみんな、もう一度列車にもどって乗車し、ニューヨークへの旅が再開することになりました。
「でも、フォッグ氏といなくなった乗客はどうするのです」 アウダがたずねました。「どうか彼らをおいて出発なさらないで」 彼女は懇願しました。
「みんな明日の列車に間に合わなければならないのですよ」 機関士がそう答えました。アウダはいっしょに行かないことにし、列車が出ていくのを見送りながら駅で待つことにしました。フィックスも彼女といっしょにとどまることにしました、まだ銀行泥棒を捕えられない、と心配しながら。

1987年に刊行した英国レディバード社とのタイアップ企画第3弾、「レディバードブックス特選100点セット」のうち、フランスの作家ジュール・ベルヌ(18428-1905)の「80日間世界一周」の第5回目。

●「80日間世界一周」全文 その5


80日間13


パスパルトゥーは自分の船室に連れてこられ、そこですぐまた寝こんでしまいました。目が覚めたとき、彼は主人を探していました。しかし、フォッグとアウダは乗船していませんでした。やっとフィックスにだまされたことに気づいたパスパルトゥーは、ひどくみじめな気持になりました。
主人が乗船しなかったのは自分の過失なのです。もし、フィリアス・フォッグが時間どおりにロンドンにもどるのに失敗し、賭けに負けたら、責めを負うのは彼、パスパルトゥーなのです。
一文なしで1人さびしく、パスパルトゥーは横浜に上陸しました。通りを歩きながら、彼はロンドンまで帰るのにどうやってお金をもうけようかと考えていました。そのとき、英語で書かれたポスターが彼の目をとらえました。それには、こう書かれていたのです。

[世紀のショー ピエロにアクロバット 手品師 今夜!]

「これだ!」 彼は思いました。「アクロバットの仕事をやってみよう」 パスパルトゥーはまっすぐ劇場へ入っていきました。
「ああ、がんじょうな男なら、使ってもいい」 アクロバットのリーダーの男が言いました。「人間ピラミッドを支える男がほしかったのだ。あおむけに寝てもらって、他の男があんたの上でバランスをとる」
3時にそのショーは始まりました。太鼓の音とともに50人のアクロバットたちが舞台におどり出ました。パスパルトゥーは横になり、その上で他の男がお互いに組合わさってバランスをとりました。人間ピラミッドがどんどん高くなるにつれて、観客はかっさいし、楽団は演奏しました。あおむけになったとき、パスパルトゥーは劇場の中を見ることができました。そして彼は、上の桟敷席でフォッグとアウダの姿をみつけたのです!


80日間14


「旦那様!」 パスバルトゥーは喜んで叫びました。自分の上の男たちを押しのけたので人間ピラミッドは総くずれになりました。彼は一目散にステージを降りて、離ればなれになっていた主人とアウダのところへかけよりました。劇場は騒然となりました。アクロバットたちは怒り狂いました、しかし、フォッグは召使がみつかったので喜び、彼らをしずめ、手いっぱいの札束を与えてその場をおさめました。
3人はそろって、太平洋を渡ってアメリカに行く汽船に乗りこむために波止場へと向かいました。フォッグは召使に、彼とアウダ、そしてフィックスがどのように日本にたどり着いたか話しました。パスパルトゥーも、アヘンを吸っていたために彼らを見失ってしまったことを話しました。が、彼は刑事に会ったことは話しませんでした。
汽船は時間どおり、サンフランシスコに向けて出航しました。「これまでまったく順調だ」フィリアス・フォッグは言いました。「この分だと時間どおり、リフォームクラブにもどれるだろう」
パスパルトゥーは喜びました。彼は主人とアウダのうしろについていました。フォッグ氏がまだ賭けに勝っていて、ついにフィックスから解放されたように思われました。彼はまた刑事のことを主人に話さなくてよかったと思いました。明らかに何かのまちがいだったのだ、でも、もうあいつのことは心配する必要はあるまい、と彼は思いました。


80日間15


パスパルトゥーは甲板の上を散歩しながら、もとの陽気な自分にかえっていました、それが、角を曲がったところでフィックスとはち合わせになるとは! 何も言わずにフィックスに向かっていくと、彼は何発もパンチをおみまいし、フィックスをなぐり倒してしまいました。
「だまされたお返しだ」 彼は大声をあげました。「今度だましてみろ、首をへしおってやる」
賢明にもフィックスは、残りの航海の間パスパルトゥーたちの目につかないところにいました、そして11日後船はサンフランシスコに入港しました。
その夜、彼らは3786マイル先のニューヨークに向かう列車の中にいました。7日間で、列車は太平洋岸から大西洋岸へと向かうことになっていました。彼らにはあと18日間が残されていました。
すべてがうまくいっている、とフォッグは思いました。おどろき、そしてうれしいことに、フィックスがまた列車に同乗していたのです。パスパルトゥーは、おどろきもうれしがりもしませんでした。
夜どおし列車はロッキー山脈を、濁流の川の上を汽笛をあげながら走り続けました。そして平原を横切っていたところでした。何千頭もの大きな野牛が線路をぎっしり走りぬけるところにぶつかり、突然列車は止まってしまいました。野牛の群は、何時間もまるで目の届くかぎりのびていく茶色の川のように、列車の前を通りすぎていきました。

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