児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ

30歳で独立、31歳で出版社(いずみ書房)を創業。 取次店⇒書店という既成の流通に頼ることなく独自の販売手法を確立。 ユニークな編集ノウハウと教育理念を、そして今を綴る。

レディバード図書館

前回に続き、「レディバード図書館」シリーズのおもな絵本には、どのようなねらいがあり、どう利用してほしいか、監修者ウィングフィールド夫妻のコメントを紹介してみよう。


(27) おばあさんと こぶた


この話も、幼児の大好きな繰り返し話です。しかし、「ひよこのリキン」 や 「にげだしたホットケーキ」 とは型の違うユーモラスなイギリスに伝わるお話です。


おばあさんとこぶた1おばあさんが、ひろった銀貨でこぶたを買い、市場から帰る途中、こぶたがさくの前に坐りこんで動かなくなってしまいます。帰れなくて困ってしまったおばあさんは、通りかかった犬に、こぶたにかみつくようにいいますがいうことをききません。しかたなく、棒に犬をたたくようにたのみますが、これもだめ。さらに、火、水、牛、肉屋、なわ、ねずみと、次々にたのみますが、みんなことわられてしまいます。このあたりまでは、物語に慣れていない子どもにはたいくつに思える場面かもしれません。


おばあさんとこぶた2このたいくつさも、後半のスピーディな展開で一挙に吹きとんでしまいます。次におばあさんは、ねこにたのんだところ、牛からミルクをもらってきてくれればという条件をだされます。牛のところへミルクをもらいに行くと、こんどは牛に、ほしくさをもってきてくれればという条件を出されます。おばあさんがいわれた通りにしたところ、牛はミルクをくれ、ねこはねずみを追いかけ、ねずみはなわをかじり、なわは肉屋をしばろうとし、肉屋は牛を追いかけ、牛は水を飲みはじめ、水は火を消そうとし、火は棒を燃やしはじめ、棒は犬をたたき、犬はこぶたにかみつこうとし、こぶたはやっとさくをこえるという順に、まさに次つぎに倒されていくドミノを見るようなめまぐるしく展開するストーリーは、子どもたちを夢中にさせること必至です。


おばあさんとこぶた3以上、「レディバード図書館」には、7つの昔ばなしをとりあげました。幼児は、友だちと楽しく遊ぶ一方、成長するにつれ、人間が社会生活を営むときに直面するテーマに必ず行き当たります。苦難、協調、強者と弱者、勝利と敗北、優れている者と劣っている者、善悪、勇気、忍耐、恩返し、友情、愛情……といったような問題です。昔ばなしには、こうしたテーマが巧みに織り込まれ、わかりやすくおもしろく展開します。ここに、昔ばなしが子どもたちの心をとらえ、今日にいたるまで「民族の遺産」として生命を失わず生きながらえてきた秘密があるのでしょう。これをきっかけにして、子どもたちに、ふんだんに昔ばなしを聞かせてください。


今回で、「レディバード図書館」の項を終了します。


前回に続き、「レディバード図書館」シリーズのおもな絵本には、どのようなねらいがあり、どう利用してほしいか、監修者ウィングフィールド夫妻のコメントを紹介してみよう

(26) まほうの かゆなべ
この話もグリム童話の1つです。家に、食べるものが全くなくなってしまったある日、おなかをすかせた女の子が、魔法使いのおばあさんから不思議なかゆなべをもらいます。このかゆなべは、命令されると、欲しいだけおかゆを作りつづけます。しかし、少女のお母さんが、おかゆを作るのをやめさせる命令の言葉を忘れてしまったために、町じゅうがおかゆであふれてしまうというユニークなお話です。

グリム童話は全部あわせて200編以上もありますが、このお話はその中でも最も短い部類に入ります。そんな短編をこのような作品に仕上げたのは、まさに、再話したべラ・サウスゲイトと画家のロバート・ラムレイの功績です。特に、ストーリーとは関係なくたくさんの場面に、ねずみをはじめうさぎ、小鳥などの小動物を登場させて、子どもたちを楽しませる気くばりは、単調になりがちなこのお話を、実に味わい深いものにしてくれています。

暮らしが豊かになって、ひもじさを体験することがほとんどない現在、いくらでもおかゆを作りつづけるかゆなべが、「なんとすばらしいものだろう」 という実感は、日本の子どもたちにはないかもしれません。しかし、今や世界の人口のおよそ3分の1が飢餓状態にあるといいます。そういう人たちを思いやる気持、それに比べて自分たちの豊かさに感謝する気持を、このような作品を通して話し合っていきたいものです。

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(25) こびとと くつやさん


グリム童話にでてくるお話です。「グリム童話」と普通呼ばれている童話集は、正確にはグリム兄弟の創作集ではなく、兄弟がドイツのいろいろな地方に昔から伝わっている物語や伝説を集めて、独自の語り口で再構築したものです。ドイツ民族が先祖から受け継いできた魂を、やさしく親しみやすく紹介したので、世界じゅうの子どもたちの心をとらえてはなしません。この話は、そんなグリム兄弟の暖かい心が流れている作品です。人のいい靴屋の夫婦と、やさしい小人たちとの心暖まる交流は、幼児の胸にも素直に溶け込んでいくにちがいありません。


こびととくつや1毎日、一所懸命はたらく靴屋の老夫婦でしたが、いつも貧しく、ある日、わずか1足分の皮革を残して廃業を決意します。しかし、翌朝起きてみると、皮は素晴らしい靴に仕立てあげられていました。そして、翌日もそのまた翌日も、目をさますと、毎朝素敵な靴が置いてありました。その靴が評判をよび、商売は大繁盛。幼児ならだれでも、夜中にだれかがこっそりやってきて、素敵なプレゼントを置いていってくれたら、どんなにすばらしいだろうと考えたことがあるはずです。このお話の導入は、まさに幼児の心理を巧みにとらえているといってよいでしょう。


こびととくつや2そして、だれがそんなことをしてくれるのだろう、という謎ときの興味につながり、それが2人の小人とわかったとき、子どもたちの心は完全にファンタジーの世界にとけこんでいきます。やがて、老夫婦が、小人のために靴と服と帽子と靴下を作ってやることになりますが、これまでプレゼントされるおじいさんおばあさんをうらやましく思っていた子どもたちは、こんどはプレゼントする喜びを発見します。


こひととくつや3寒々とした身なりをしていた2人の小人が、プレゼントされた服を身につけて大喜びするところは、心地よい暖かさとともに、いつまでも子どもの心に住みつづけることでしょう。そんな小人の存在をいつまでも信じられる、想像力豊かな子どもであってほしいものです。


前回に続き、「レディバード図書館」シリーズのおもな絵本には、どのようなねらいがあり、どう利用してほしいか、監修者ウィングフィールド夫妻のコメントを紹介してみよう


(24) めんどりと むぎ


めんどりとむぎ1この話もイギリスの昔ばなしです。「働かざるもの食うべからず」ということわざがありますが、このテーマを幼児にもわかりやすく描いた物語です。このような教訓的なテーマは、とかく堅苦しい話になりがちですが、幼児に身近な動物と日常生活の実感を通して展開されているので、説得力があります。


めんどりとむぎ3めんどりが、麦の落ち穂を拾います。友達のねこと、ねずみと、ぶたに、いっしょに種まきをしようとよびかけますが、だれも手伝おうとはしません。しかたなく、めんどりだけで、種まきをします。やがて収穫の時期がやってきて、こんどは、麦刈りをしようとよびかけますが、なまけ者の3びきは、また拒否します。同じように粉ひきも、パンを焼いてもらいに行くことも拒否します。ところが、焼きたてのパンの香ばしいにおいをかいだ3びきは、めんどりに「パンをたべるのを手伝いたいか」といわれると、口々に手伝いを申し出ます。


めんどりとむぎ2しかし、めんどりは、きっぱりとことわって、みんなの前で食べてしまいます。めんどりは、いじわるなのではなく、なまけ者の3びきを戒めていることを子どもたちに理解させ、ひとつのことをなしとげるにはお互いに助け合ってはじめて、喜びをわかちあえるということを知らせてあげましょう。


前回に続き、「レディバード図書館」シリーズのおもな絵本には、どのようなねらいがあり、どう利用してほしいか、監修者ウィングフィールド夫妻のコメントを紹介してみよう


(23) 3びきの やぎ


小、中・大の3びきの野生ヤギと、魔物的な巨人トロルとの戦いをスピーディに語る北ヨーロッパに伝わる昔ばなしです。


3びきのやぎ4まず、小さいヤギが橋を渡ろうとすると、トロルが恐ろしい声で呼びかけます。このとき子どもたちは、小さいヤギといっしょになって、ハラハラしながら、トロルをみつめることでしょう。しかし、この小さなヤギは利口でした。トロルに、自分より大きくてふとっているヤギが後からくることを話して、うまく危機を脱します。緊張した子どももほっと胸をなでおろすことでしょう。


3びきのやぎ1次に登場するのが中くらいのヤギです。中くらいのヤギも小さいヤギと全く同じ手で難をのがれます。子どもたちの期待どおりの展開です。そして、最後に大きいヤギの登場です。もう小さいヤギや中くらいのヤギと、同じ手は使えません。子どもたちは、大きいヤギが一体どうやってトロルの手からのがれるのだろうか、興味津々の場面です。


3びきのやぎ23びきのヤギが橋をわたる足音は、小さいヤギがコツコツ、中くらいのヤギがガタガタだったのに、大きなヤギの足音は、ドンドンドンドンといかにも強そうです。大きなヤギが堂々とトロルに戦いをいどみ、みごと川に突き落としてやっつけてしまう力強い幕切れに、子どもたちは大いに満足することでしょう。


3びきのやぎ3この小、中、大の3びきのヤギは、人間の成長過程を表わしているとみることができます。小さいヤギは幼い子ども、中くらいのヤギは若者、大きなヤギは一族の長にふさわしい勇気と力にあふれたリーダーです。大きなヤギが、堂々とトロルに戦いを挑み勝利をおさめるのを、小さいヤギも、中くらいのヤギもしっかり見届けます。こうして、知恵をもって難をのがれた小、中のヤギは、大きなヤギの行為から、勇気を学んでいくのです。


*このお話は、福音館書店から刊行されているロングセラー「3びきのやぎのガラガラドン」の元になっている昔話。


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