児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ

30歳で独立、31歳で出版社(いずみ書房)を創業。 取次店⇒書店という既成の流通に頼ることなく独自の販売手法を確立。 ユニークな編集ノウハウと教育理念を、そして今を綴る。

せかい伝記図書館

せかい伝記図書館」の執筆の中心にお願いしたのは、「全国学校図書館協議会」編集部長を歴任し、その後フリーライター、作家として活躍しておられた有吉忠行氏であった。このシリーズの完成後の1982年、「いずみ書房」の営業幹部を前に「厳しい出版理念に基づいた伝記シリーズの完成を喜ぶ」と題した講演をお願いした。その記録を、何回かに分けてここに紹介する。

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まずはじめに、いまの子どもたちの読書状況について、かんたんに申しあげてみます。私が4、5年前までつとめておりました全国学校図書館協議会では、20数年来、毎日新聞社といっしょに読書調査を行ってきておりますが、この調査結果によりますと、マンガや週刊誌をのぞいた1ヵ月の平均の読書量は、小学生が5冊、中学生になるとわずかに2冊です。最近の子どもたちは、ますます本を読まなくなってきているといわれるのも当然です。でも、小学生の1人平均が5冊なら、読んでる子はひと月に何10冊も読んでいることになり、読書量の減をそれほど悲観することはないという見方もあります。

ところが問題は、読書の量よりも内容です。つまり、やや専門的な言葉でいいますと、考える「重読書」よりも、ただ楽しむだけの「軽読書」が多くなってきているということです。これは、昭和30年以降、テレビの普及とほとんど平行しています。具体的に申しあげますと、昭和30年から40年ころまでの読書調査の結果では、子どもたちが多く読んでいる本の上位に、必ず内外の名作が半分以上あがっていました。宮沢賢治や夏目漱石などの作品です。ところが、最近はこれらの多くが姿を消し、かわりに、つりの本をはじめとして趣味の本などの軽読書材がたいへんふえてきています。これは、子どもに限らず、おとなの世界でも、全く同じで、文学全集のようなものが現実に売れなくなっています。

これらのことは、やや極端にいいますと、ほんとうの読書というものが、だんだん消えているということです。つまり、遊びの読書になってしまっているということです。このことは、子どもにもおとなにも、マンガがたいへんよく読まれている事実を見れば、すぐわかります。

ただし、遊びの読書がすべて悪いとは申しません。しかし、全国学校図書館協議会などが、20年も30年も読書運動をつづけていることには、大きな理由があります。それは、本を読むことを通して 「自分の頭で考える」 子どもを、多く育てたいからです。

● 手軽に楽しめるコンパクト版の魅力

本シリーズの魅力は、なんといっても、コンパクト版で廉価であること。「読書をしよう」 と身がまえる必要もなく、ひょいと手軽に、寝ころびながらでも手にとることができる。しかもオールカラー、見開きページに必ず格調高いイラストを入れている。時代考証に裏づけられ、人物とその背景を容易にイメージ化できるよう配慮されたイラストは総枚数1000枚にもおよぶ。また、漢学にはすべてふりがなをふったから、低学年でも読めるばかりでなく、読みかたも、正確に自分のものにすることができる。

● 「世界人名事典」 「日本人名事典」「人名索引」を特別編集

人名事典は、世界と日本それぞれ1000名収録し、小・中・高で学ぶほとんどの人物、また常識的人物を、1名約200字で簡潔に紹介した。総ルビのため、読みも正確に知ることができる。一家に必備の人名百科としての役割をはたせるよう工夫した。

さらに、「人名索引」では、「せかい伝記図書館」に登場する2000名が、何巻の何ページに登場するかがわかるように編集。さらに、有名な呼び名が2つ以上ある場合、どの名前で調べればよいかを示した。たとえば、「桂小五郎」は「木戸孝允」として調べるようにというふうに。その他、中学・高校時代にとまどいがちな外国人の名前については、英語読みをあげ、他の国ではどう呼ぶか、その呼び名を掲げた。

たとえば、ジョン(英語)→ヨハン(ドイツ語)、ジャン(フランス語)、ジョバンニ(イタリア語)、ファン(スペイン語)、イワン(ロシア語)/ヘンリー(英語)→ハインリヒ(ドイツ語)、アンリ(フランス語)、エンリコ(イタリア語)/チャールズ(英語)→カール(ドイツ語)、シャルル(フランス語)、カルロス(スペイン語)、カルル(ロシア語)など、30名ほど記載した。

● 小・中学時代に身につく読書習慣

少年時代 「子ども世界史」 という本で読んだ伝説だというトロヤ戦争が、ほんとうにあったことだと信じ、40年後ついにトロヤの遺跡を掘りおこしたシュリーマン。ガリレオの著書に身ぶるいするような感動を覚え、物理学への道へ進もうと心にきめたアインシュタイン。「兵書」というオランダ語の本を、持ち主が寝ている夜中だけ借りうけ、数ヵ月かけて写しとって西洋の兵術を学んでいった勝海舟。アンデルセンは幼い時、まずしいくつ直しの職人だった父が読んでくれる「アラビアンナイト」を、眼を輝かせて聞いて詩才を養った。マルコポーロの 「東方見聞録」 に書かれた黄金の国ジパング(日本)を求めて、アメリカを発見したコロンブス。持ち主のために三日間働いて、やっと譲りうけた「ワシントン伝」を、暗唱するまでくりかえし読んで、正義とは何かを学んだリンカーン。

少年・少女時代における本との出合いの大切さは、こうした偉人の例をあげるまでもない。読書は知識を増し、情緒を養うと共に、自分をみつめ、ものを深く考える力をつちかってくれる。

このように大切な読書習慣であるが、この習慣をつけるには、きっかけと環境を必要とする。おとなのさまざまな工夫が必要だ。いつもかたわらに本をおき、本にふれるチャンスと時間を与えたいもの。そして何よりの環境づくりは、両親が日々読書に挑戦している姿を、子どもたちに見せることではないだろうか。

● 小・中学校の教科書に登場する人物を網羅した新時代の伝記全集!

国語、社会、理科、音楽、美術・・・に出てくる人物を、ほとんど収録しているので、学習の副読本として役立つ。1980年新しくなった「小学校学習指導要領」では、社会科の歴史学習が人物を中心とした指導になり、国語では、作文力が重視され、国語の総時間数の30%が作文の時間になって、小学6年間に読書習慣を身につけ、活字に親しむことを目標にしている。この骨子は、1998年の学習指導要綱でもほぼ踏襲。

本シリーズは、世界も日本もそれぞれ時代別の編成になっているから、巻を追って読み進めていくうちに、大きな歴史の流れを、いつのまにか身につけられるように工夫をした。たとえば、「明治維新」というテーマは、日本の歴史の上でも大変理解のむずかしい時代である。そこでこのシリーズでは、「勝海舟」 「西郷隆盛」 「坂本竜馬」「佐久間象山」「大久保利通」「吉田松陰」 「木戸孝允」「徳川慶喜」「高杉晋作」ら10数人の伝記を読むうちに、幕末から明治にかけての激動する時代が、鮮明にイメージ化できるのだ。それは、この時代を生きぬいてきた、それぞれの人物の立場から、この時代がくりかえし描きだされ、このテーマを多角的にとらえることが出来るからである。しだいに「歴史」がおもしろくなり、NHKの大河ドラマをはじめ、テレビドラマや映画の時代劇も、興味深くみることができるようになることだろう。

巻頭に 「歴史年表」 を掲げて、伝記に登場する人物がどういう時代に生きたのか、大きな歴史の流れの中での把握と、歴史学習に役立つような配慮もした。読書することが、作文力を増すことはいうまでもない。各巻末に 「読書の手びき」 をつけ、それぞれの人物をどういう視点で読み進めたらよいか、どういうねらいで書き進めてきたのか、どんな点を学んでほしいかなど、さまざまな指針を盛りこんだので、感想文を書くときにも、大いに役立つはずである。

学校の勉強がおもしろくなるのは、授業の内容がよくわかるからである。ベートーベンやモーツァルト、シューベルトの伝記から、授業で習う曲の背景を知り、ダ・ビンチ、ミケランジェロ、ロダンらの芸術家の伝記により、絵や彫刻が、どんな苦労の中から生みだされてきたかを知り、新しい眼が開かれることだろう。炎の画家として名高いゴッホが、生存中はほとんど無名だったと知れば、あの燃えるようなひまわりの絵や、はね橋の絵ももっと身近なものになることだろう。ファーブルやシートンの伝記からこん虫の生活や観察のしかた、動物の生態を知り、理科の興味が芽ばえることもあるかもしれない。

ポケット絵本シリーズ、第4期「せかい伝記図書館」(36巻・別巻3)の特色について4回にわけて掲げてみることにします。

● 夢・希望・勇気・信念・・・人間形成の発芽期に出合いと感動を贈る!

小学校をわずか3ヶ月で退学させられた発明王エジソン。三重苦の障害をのりこえて、身障者のために生涯をささげたヘレンケラー。厳しい寒さに耐えられるよう、真冬に窓をあけはなして身体をきたえた少年時代のアムンゼン。アフリカのジャングルにわけ入り、病気に苦しむ黒人のために身をささげたシュバイツアー。人間の限界に挑戦し、2000冊もの本を集大成した盲目の学者塙保己一・・・等々。

歴史に、大きな足跡をのこしてきた人たちの生涯を、親しみやすく、わかりやすく描いた。自分の信じる道を、夢を、勇気と希望をもって一歩一歩つき進んでいった人たちの生きざまは、感受性の豊かな子どもたちに、深い感銘をもたらすことだろう。

子どもたちは、無限の可能性をもっている。文学者、政治家、実業家、探険家、科学者、宗教家、音楽家、画家、スポーツマン、発明家、教育者・・・。さまざまなジャンルの、数多くの伝記にふれることによって、生きかたを学び、豊かな情操がつちかわれ、将来の夢が育っていくはずである。

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