七五調のリズムに乗って、中也の「春の宵への思い」が明快に語られる詩ですが、春の訪れに浮かれているようでありながら、その奥に苦い悔恨と苦渋が隠されているのは多くの作品にもみられる通りです。
この詩にはとくに、青春の波乱を経てきた中也の諦観と、諦観を超えた人生との和解がこめられているといえそうです。初出は、中也が亡くなるわずか数か月前に、小林秀雄が編集の中心となっていた『文学界』昭和11年7月号に発表されたもので、小林が託された『在りし日の歌』(56篇)のうちの、40番目に置かれています。
30歳で独立、31歳で出版社(いずみ書房)を創業。 取次店⇒書店という既成の流通に頼ることなく独自の販売手法を確立。 ユニークな編集ノウハウと教育理念を、そして今を綴る。