こうすれば子どもはしっかり育つ 「良い子の育てかた」 80

ある花屋の店先でのことです。

母親に連れられた3、4歳の男の子が、花屋の前に並べてある鉢へ走り寄ると、いきなり、鉢の花を手にかけて、その花を摘みとろうとしました。あわてた母親は 「あっ、だめでしょ」 と叫ぶと、花の茎をつかんでいる子どもの手首を握って、まぎれもなく叱る時の声で 「離しなさい、早く離しなさい」。そして、子どもがやっと花から手を離すと 「お花がかわいそうでしょ」 と、いかにもその場をつくろうように、子どもを引きずるようにして向こうへ行き、やがて 「どうしてあんなことをするの」 の声といっしょに、子どもの頭をポカリ。

これは、おかしいようで、なぜか笑えない光景でした。

こんなとき、なぜ 「どうしてあんなことをするの」 に、なってしまうのでしょう。よく考えれば、その男の子が花屋の鉢の花であるにもかかわらず、それを摘もうとしたのは、母親のほうにこそ責任があるということは、すぐにわかります。この場合、「お花がかわいそう」 よりも、「自分のうちの物」 と 「よそのうちの物」 との区別を、きちんと教え導くべきでしょう。

このように、多くの母親のわが子への 「どうして」 は、親の方にこそ責められることがよくあります。「どうして、そんなにぐずなの」 などと叱られるのでは、子どもはたまりません。自分からすすんでぐずになったのではないのですから。