児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ

30歳で独立、31歳で出版社(いずみ書房)を創業。 取次店⇒書店という既成の流通に頼ることなく独自の販売手法を確立。 ユニークな編集ノウハウと教育理念を、そして今を綴る。

2005年11月

私が、「いずみ書房」という出版社をはじめる端緒となったのは、英国レディバード社の刊行するコンパクト版の絵本シリーズ「レディバードブックス」との出会いからだった。このことは、5月30日にブログを開始した当初数回にわたり詳述してきたので省略するが、会社をはじめてからも、レディバード社の刊行するシリーズはいつも気になる存在で、ユニークな新刊を入手するたびに、いつかこのシリーズの翻訳権を獲得して、日本語版を刊行したいと考えていた。その願いが、思わぬことがキッカケになって、実現できることになった。このあたりの事情を何回かに分けて綴ってみる。

当社の草創期に、最大の卸先だったJ・チェーンが倒産したため、2千万円を超える不渡りをこうむった話を書いた。この時の大苦戦物語に多くの方から「よく乗り切りましたネ」といわれるが、振り返って考えると、若さとみなぎる情熱があったからこそ、あの苦難を乗り越えられたものと今さらながらに思う。最終的には、なけなしの土地を1000万円で売り払うことで決着し、その後のフランチャイズ販売組織を立ち上げることができた。そして、いずみ文庫(童話図書館科学図書館・ワールド図書館伝記図書館)と、「みんなのおんがくかい」という5大シリーズを刊行し、全国販売組織の基盤を築くことができた。そして、これに続くシリーズが1985年に発売した「レディバード図書館」(27巻・別巻8)であった。

その頃の出版直販界は、厳しい風が吹きはじめており、これまで業界をリードしてきた「ブックローン」や「ほるぷ」といった大手も苦戦が続き、組織の衰えが目立ってきたころであった。当社も例外ではなく、新商品の投入にもかかわらず、前年比横ばいかダウンが続き、新たなシリーズを刊行できる資金的余裕はまったくなくなっていた。

拠点長会の席上で語った内容の第7回目・最終回。

「せかい伝記図書館」とは、セミクラシックの名曲と結びつけるのがよいと思います。たとえば第1巻目をとりあげただけでも説得力のあるテーマをみつけることができます。この巻には、世界の3大音楽家といわれるベートーベン、モーツァルト、シューベルトの名曲がそれぞれ1曲ずつ取りあげてあります。

ベートーベン作曲の有名な 「エリーゼのために」 が、ほとんど耳がきこえなくなった40歳のころに書かれた作品であるということや、モーツァルトがあまりの貧しさのために、遺骸は共同墓地に捨てられるように葬られ、今では骨1本さえ行方不明であるという事実、シューベルトもまた、生存中はほとんど評価されず、貧しさに追われた果てにチフスで命を落としました。

音楽史に燦然と輝く3人の巨匠が、生存中はそろって貧しさや苦しさと闘いながらも、おのれの生きかたを信じてすばらしい作品を書きつづけたわけで、そういう事実を知るとき、深い感動をおぼえずにはいられません。これは、まさに「伝記」の最大のテーマだと思います。

第1巻目にはもうひとり、パダレフスカという22歳でなくなった女流音楽家の「乙女の祈り」が収録されていますが、この人の作品は、この曲以外はほとんど知られていません。この曲のすばらしさによって、音楽史に「湖畔に立つ1本の白樺のようにたたずんでいる」という評価は、人生そのものを感じます。

伝記的テーマといえば、「かくれんぼ」(第6巻)の解説の中で、良寛さんが子どもたちとかくれんぼをして、つぎの日の朝になってもまだかくれていたという話がのっていますが、こうしたエピソードと伝記を結びつけるのもひとつの方法でしょう。

私は、セールスというのは相手を「説得して」売り込むのではなく、お客さんに「納得して」購入いただくことだと考えております。そして、商品を売り込む以前に、営業マンのみなさん一人ひとりの人柄を売り込んでいただきたい。どんなに商品が気に入っても、きらいな人から顧客は物を買いません。今申し上げたようなことを参考に、ご自分の言葉で商品の内容をしっかり説明することにより、お客さんとうまくコミュニケーションとって納得いただき、大きな成果をあげてくれることを期待申し上げます。

拠点長会の席上で語った内容の第6回目。

私は、「みんなのおんがくかい」を企画したとき、まっ先に考えたのがひとつひとつの歌に解説をつける、ということでした。どの歌にも人々の心を打つものがある、だからこそ長い年月歌いつがれてきたはずです。これは、昔話が伝えられてきたのと非常に似ていると思われます。というより、「しょうじょうじのたぬきばやし」 は、まさに昔話の世界そのものといってよいでしょう。この歌を話題にしながら、「せかい童話図書館」 の「ぶんぶくちゃがま」や「かちかちやま」のような、たぬきを主人公にしたお話と結びつけてみてはいかがでしょう。

また、「こども科学図書館」 の「いぬ」を開けば、たぬきが犬の仲間だということもわかり、「いぬ」 とつなげることもできます。このように「みんなのおんがくかい」が、他のシリーズと容易に関連づけられる宝庫であることを是非実感していただき、お客様とのコミュニケーションを深めてください。

「せかい童話図書館」 と直接結びつくストーリー性のあるテーマとしては、「きんたろう」「うさぎとかめ」「たなばたさま」をはじめ、「サッちゃん」「どんぐりころころ」「とんでったバナナ」「あかいくつ」「おすもうくまちゃん」「アイアイ」「あおいめのにんぎょう」「おおきなふるどけい」「おやまのおさる」「わらいかわせみにはなすなよ」「もりのくまさん」「やぎさんゆうびん」「めだかのがっこう」など、たくさんあります。

「こども科学図書館」でも同様。童謡「おつかいありさん」や「ぶんぶんぶん」と 「ありとみつばち」、「ぞうさん」と 「ぞう」、「おすもうくまちゃん」「もりのくまさん」「あめふりくまのこ」と 「パンダとくま」 ……など。

「子どもワールド図書館」 と結びつけることも容易です。「みんなのおんがくかい」には、世界の民謡がたくさん収録されています。フランス民謡には、「クラリネットをこわしちゃった」「はしのうえで」、ドイツ民謡の「ちょうちょう」「やまのおんがくか」、イギリス民謡の「ピクニック」、ポーランド民謡の「こなゆきのポルカ」、 アメリカ民謡の「アルプスいちまんじゃく」「メリーさんのひつじ」「じゅうにんのインディアン」「せんろはつつくよどこまでも」……など、それぞれの国と民謡を関連づけるわけです。


拠点長会の席上で語った内容の第5回目。



音楽の先生はそのあと「しょうじょうじのたぬきばやし」 の話をしてくれました。雨情は歌の取材のために、千葉県木更津市の郊外にある証誠寺をおとずれたとき、住職から寺につたわる伝説を聞いたそうです。



むかし、三味線の大変じょうずなおしょうさんがいて、ある秋の夜、おしょうさんがいつものように三味線をひいていると、お寺の庭になんびきものたぬきが集まってきた。やがて、三味線に合わせながら、たぬきたちは力いっぱいお腹をたたいて楽しい宵をすごした。こんなことが何日も続いたある夜、おしょうさんがいくら待ってもたぬきたちが出て来ない。心配になったおしょうさんが庭を探してみると、なんといつもみんなに声をかけていたリーダー役のたぬきが、お腹に穴をあけて死んでいるのが見つかった。かわいそうに思ったおしょうさんは、お寺の庭にたぬきのお墓を作って暖かく葬った……、こんなお話でした。



雨情はこの話に大変感銘して、この伝説を歌にしようと考えました。そして出来たのが「しょうじょうじのたぬきばやし」なんだそうです。音楽の先生から歌が出来上がったいきさつを聞いていなかったら、「しょうじょうじのたぬきばやし」 も単なるコミカルな童謡くらいの印象しかなかったでしょう。それが、30年近く経った今もはっきり覚えているわけです。









拠点長会の席上で語った内容の第4回目。



みんなのおんがくかい」 が、他の「いずみ文庫」(ポケット絵本シリーズ)とは異質のシリーズではないということを申し上げたいと思います。むしろ、「みんなのおんがくかい」 を基本に「童話」「科学」「ワールド」「伝記」すべてに結びつけ、組み合わせることのできる教材だということです。その理由は、あとでお話します。



「みんなのおんがくかい」 の最大の特長は、歌の心をわが子に語って聞かせるためのアドバイスや解説がついているといってよいでしょう。こうした試みはこれまで、どこの出版社もやっていません。なぜ、こんな労の多いことをしたのかを、ちょっとふれたいと思います。



私がまだ小学生だったころのこと、音楽の先生が野口雨情のことを話してくれました。野口雨情というひとは、大正7年ごろからおこった新しい子どもの歌運動の中心になって、数々の名曲を作詞されたかたですね。「おれは河原の枯れすすき~」という「船頭小唄」を作った人です。「みんなのおんがくかい」にも、「あめふりおつきさん」「こがねむし」「あおいめのにんぎよう」「しゃぼんだま」「あのまちこのまち」「しょうじょうじのたぬきばやし」「七つのこ」「うさぎのダンス」「たわらはごろごろ」「あかいくつ」全部で10曲収録しています。



今でもはっきりおぼえているのですが、「しゃぼんだま」 という歌は、雨情の幼くして死んだわが子への鎮魂歌として作られたものだと、先生はしみじみ語ってくれました。2番の歌詞に 「しゃぼんだまきえた/とばずにきえた/うまれてすぐに/こわれてきえた」 とありますが、生まれたばかりのわが子が、飛ばずに消えた「しゃぼんだま」のようにはかない人生だった。その悲しみをこの歌に託したと聞いて以来、この歌を耳にしたり歌ったりするたびに、目頭があつくなります。このように、雨情の童謡には、一貫して曲全体にやさしさと、愛の心が流れているといってよいかと思います。




しゃぼんだま



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