児童英語・図書出版社 創業者のこだわりブログ

30歳で独立、31歳で出版社(いずみ書房)を創業。 取次店⇒書店という既成の流通に頼ることなく独自の販売手法を確立。 ユニークな編集ノウハウと教育理念を、そして今を綴る。

2005年09月

「子どもワールド図書館」(全38巻)は、どんな構成で、定価はいくらなのかという問い合わせをいただきましたので、お知らせいたします。

[全38巻のタイトル]
(1)フランス(2)ドイツ(3)イタリア(4)スペイン・ポルトガル(5)イギリス(6)スイス・オーストリア(7)オランダ・ベルギー・デンマーク(8)北ヨーロッパ(9)ギリシア(10)東ヨーロッパ(11)中国1(12)中国2(13)朝鮮・モンゴル(14)東南アジア1(15)東南アジア2(16)南アジア(17)西アジア1(18)西アジア2(19)エジプト(20)アフリカ1(21)アフリカ2(22)ソビエト1(23)ソビエト2(24)カナダ・アラスカ(25)アメリカ1(26)アメリカ2(27)メキシコ(28)中央アメリカ(29)南アメリカ(30)オーストラリア・ニュージーランド(31)太平洋諸島(32)日本1・北海道篇(33)日本2・東北篇(34)日本3・関東篇(35)日本4・中部篇(36)日本5・近畿篇(37)日本6・中国・四国篇(38)日本7・九州篇

先にお知らせしましたとおり、内容が古くなってしまった部分があります。タイトルでも、(22)(23)の「ソビエト」は、すでに存在していません。しかし、このシリーズがめざすものは、単なる世界や日本の案内書ではなく、それぞれの国の興りや民族の誕生、文化発展の流れ、地勢や気候なども子どもたちが理解しやすい記述を心がけました。また、小中学校の教科書にも気を配り、社会、歴史、地理などに登場する基礎的な事柄は、すべて収録するようにつとめています。歴史の浅いアメリカはどのようにして超大国になったか、エジプト文明、ギリシア文明、インダス文明とはどんな文明だったのか、アジアやアフリカの大部分の国が貧しいのはなぜなのか、スイスやオーストリアはどうして永世中立国になったかなど、たくさんの本質的なテーマに肉薄しています。

「子どもワールド図書館」は現在、いずみ書房のホームページから除外していますが、僅少ながら在庫していますので、以上の点をご理解いただいた上で、ご購入を希望される方は、通常の通販商品と同様のやり方でご注文ください。品番および特価は次の通りです。

(品番513) 子どもワールド図書館 特価15,000円 (定価35,000円)



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前日に続き、「イスラエル」の項の後半を紹介する。



戦争の原因はまた、エルサレムにもあります。エルサレムは聖都といわれ、ユダヤ教のイスラエルの人たちはもちろん、キリスト教やイスラム教の人びとから、あがめられているところです。



そこにある「なげきの壁」は、むかしローマに滅ぼされ、国を失ったときの、悲しみやなげきをうつす壁として、長くイスラエルの人びとの心にきざみつけられてきた記念碑です。イスラム教の人たちにとっては、マホメットにゆかりのある「岩のドーム」があります。




イスラエル5
はりつけにされるキリストが、自ら十字架を背負ってゴルゴダの丘まで歩いたという道も、エルサレムにあります。信者たちは、その道を「悲しみの道」とよんでいます。



このようにエルサレムは、宗教や政治の中心地として長い歴史のなかにおおくの戦争のきずあとを残してきたのです。十字軍はエルサレムをイスラム教の国の支配からうばいかえすために、キリスト教の国ぐによってつくられた騎士団でした。




イスラエル6
そしていまなお、エルサレムをめぐる人びとの感情の対立がつづいています。現在のイスラエルという国ができた1948年から今日まで、中東戦争といって、イスラエルとまわりのアラブの国との間に戦争がたびたびおこり、いまやっと平和のとりきめにこぎつけたというわけです。



苦難の道をあゆんできましたが、イスラエルの人たちは明るくりっぱな国づくりにはげんでいます。キブツという集団で農業や工業をおこなう集団があって、若者たちが労働に汗を流しています。





イスラエル3
前回に続き、「イスラエル」の項の後半を紹介する。



この当時は、どこの国も、少数の王や貴族の下にたくさんのまずしい人たちがいて、それが何代もくりかえされていました。貧しさにいためつけられている人びとは、キリストの教えをひたすら信じ祈りました。








ローマ帝国
やがてキリストは「ローマにそむいて新しい国をつくろうとした」とみられ、十字架にはりつけにされて死にました。キリストの教えを信じる教徒たちは、いろいろな迫害をうけましたが、キリスト教はますます広がってゆきました。



とうとう時のローマ皇帝コンスタンチヌスはキリスト教をみとめることになりました。後にローマ帝国の国教となり、キリスト教はヨーロッパのすみずみまでしみわたってゆきました。



キリスト教の繁栄に対して、国をなくしたユダヤの人たちは、2500年という気の遠くなるような月日のあいだ、いつか自分たちの国をもちたいと世界じゅうをさまよい歩きはじめました。しかし、どの時代の人たちも、ユダヤ人にやさしくありませんでした。




アンネの日記
さきの第2次世界大戦でも、ナチスドイツ軍のために600万人の仲間がユダヤ狩りで殺されました。「アンネの日記」の少女アンネも、そのぎせい者のひとりでした。



戦争が終わって1948年、国際連合によってやっと、イスラエルはいまの地に国がみとめられたのですが、こんどは、イスラム教徒のアラブ人たち100万人が土地をおわれることになりました。こういういきさつから、現在もイスラエルとアラブの国ぐにとの間に、にらみあいがつづき、血を流すテロや戦争がたえないのです。





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「子どもワールド図書館」(38巻)の中で、もっとも評価が高かった一つは、「西アジア」(1)(2)であった。特に、2巻目に17ページ分をさいて「イスラエル」を紹介した部分は、中学校の社会科の教師(東京・杉並 山本絵美先生)から、次のような賛辞の手紙をいただいたので記してみよう。



「子ども向の地理の本だとタカをくくっていたら大間違い。イスラエルとイスラム諸国の対立事情を旧約聖書までさかのぼって掘り下げたり、国や民族のあゆみを、ふんだんなイラストと簡潔な記述でわかりやすく紹介しているので、大変参考になる。最新の世界情勢の変化に対応できていない面はあるがこれは表象的なもので、優れた文化地理入門として同僚たちにすすめている」



「イスラエル」の項は、次のように展開する。3回に分けて、この部分を紹介してみよう。



ユダヤ人の国イスラエルができあがった事情を知るには、ユダヤ人の歴史ともいわれる旧約聖書をふりかえらなくてはなりません。紀元前1400年ごろ、エジプトで平和にくらしていたイスラエルの人びとに、悲しみがおとずれました。エジプトの新しい国王が、イスラエル人をどれいとして牛馬のようにこきつかいはじめたのです。




イスラエル1
「このままでは死んでしまう」 やがて、モーゼというりっぱなリーダーがでて、ひそかにみんなをつれてエジプトをのがれました。しかし、たちまちエジプト軍に気づかれてしまい、戦車がせまってきました。うろたえる人びとの前に、運悪く海がたちはだかりました。



モーゼは海に向かって、手をさしのべ 「神さまどうかお助けください」と祈りました。すると足もとの潮がどんどん引いて白い砂地があらわれたのです。人びとが渡りおわると海はまたもとどおり、おってきたエジプト軍は波にのみこまれてしまいました。




イスラエル1-2
モーゼは、シナイ山で神の声をききました。「私はヤーウェの神だ。私のほかに神はない。私のいうことをまもって、たがいに仲よくし、カナン(イスラエル)にりっぱな国をつくるのだ」 こうしてヤーウェの神はイスラエル民族の神に高められ、ユダヤ教の土台ができあがりました。やがてエルサレムを首都として、ユダヤ王国は栄えました。ところが2500年前ごろから、バビロニアやギリシアなどに支配され、ついに1900年前、ローマによってほろぼされてしまいました。



いっぽう、いまから2000年近く前にイエス・キリストがユダヤの町ベスレヘムに生まれました。キリストはヤーウェの神はユダヤの民だけを救うのではなく、すべての人びとを神の愛に導く、と教えました。




イスラエル2





ワールド図書館
「いずみ書房」が創業後に刊行した、ポケット絵本シリーズの第1期「せかい童話図書館」(40巻)、第2期「こども科学図書館」(40巻) につづく第3弾は、1980年4月に完成した第3期「子どもワールド図書館」(38巻)だった。子ども向けの文化地理の絵本シリーズとしては類のない企画で、当時TBSのニュースキャスターをしていた、入江徳郎氏(元朝日新聞論説委員で「天声人語」の筆者としても有名)は、このシリーズに対し、次のような推薦文を寄せてくれた。



「いま世界には160以上の国がある。ジェット機やテレビの宇宙中継技術、通信技術の発達などにより、世界は著しく狭くなった。しかし、それにもかかわらず私たちの世界の国々についての知識は貧弱なものである。早い話が私たちは、お隣の韓国やアジア諸国のことを、遠いヨーロッパやアメリカほどには知らないはずである。「子どもワールド図書館」が、世界の主要な国々について、今日の姿や歩みを国々の歴史に照合し、それらのひとつひとつがそこに住む人々にとってどんなに重要であったか、人々の叡知がどのように凝縮されてきたかなどを、わかりやすく紹介してくれたことは、大変意義深い試みであると思う。こうした理解が、あの国は暑いとか寒いとか、何が有名だといったような表象的なものでないホンモノの理解であり、ますます国際化した社会に生きなければならない子どもたちには、いっそう要求されるものなのである」



評判はよかったものの、世界の国々の変化のスピードはまことに速い。増刷のつど、改訂を試みたが追いつかない。1991年に補遺版を刊行し、東欧諸国の民主化、東西ドイツの統一、ソ連の消滅、チェコとスロバキアの連邦解消、苦悩がつづくユーゴスラビア、ECの統合など30項目にわけ「世界はいま」(世界と日本の30大ニュース)を添付した。だがその内容も、1、2年もすると改訂をせまられるほど変貌してしまうのだ。そのため現在は、内容に古い点があることを承知いただいた方にのみ販売することにしている。




世界はいま



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