中也の死後に発表された詩集『在りし日の歌』の4番目に登場するこの詩は、多くの読者に人気のある詩の一つです。1928年(昭和3年

中也21歳)に作り、昭和10年に帝大(今の東大)新聞に掲載されたのが初出とされています。透明な童謡のような七五調の詩で、当時の中也の作品の多くが深い嘆息や哀しみに満ちていたのに対し、ここには叙景詩として早春の風のように、平穏な情趣にあふれ、痛烈な嘆きや悶えをつきぬけた後の詩境といえそうです。

「少女のあごと思えるような早春の山野の樹木は、まだ新芽もふくらんでおらず、枯れ枝ばかりでとげとげしく立っている。そこへ光まぶしい金の風が吹き、強い風は銀の鈴を鳴らす」といった内容ですが、金の風・銀の鈴・女王の冠さながらに・鳶色の土かおるれば・青き女(おみな)の顎(あぎと)かと、といった言葉や表現が、詩に華やかさを与えるところに、人気の秘密があるのでしょう。

糸久氏の、これまたうきうきするような魅力あふれるイラストにもご注目ください。