ある日曜日の朝は雨でした。窓辺に立つ私は、緑あざやかな菖蒲の葉に映えた雨に打たれている光景をじっと眺めています。そこに、泰子と思われるうるんだ瞳の面長の女性が、雨の中に現れては消えていきました。現れては消えていくと私の心は憂いに沈み、雨はしとしとと畑の上に落ちています。


そして、これに続く第3・4連への場面転換には絶妙なものがあります。

お太鼓たたいて笛吹いて……。文也とおぼしき子どもたちなのでしょう。詩人の幼いころの姿とも重なります。流麗感のある七五調、色彩豊かなイメージの抒情詩は、お見事の一言につきます。

この詩は、昭和11年(1936年・中也29歳)4月と推定されています。この時、長男文也は1歳半で、眼に入れても痛くはない可愛い盛りでした。初出は、同年『文学界』6月号で、翌月7月号に発表された第6回「文学界賞」の選外2席となっています。この時の受賞作は、岡本かの子の小説「鶴は病みき」でした。中也の悔しさが目にみえるようです。