この詩は、1935年(昭和10年・中也28歳)『文学界』4月号に発表されたもので、この当時中也は精力的に多くの雑誌に寄稿しています。前年10月には長男文也が誕生したことで、生きる張り合いが出てきたのでしょう。


この詩のユニークなところは、まず、菜の花畑のなかに文也と思われる赤ン坊が登場します。その眠っている赤ン坊のまわりを、電線が鳴り、自転車が走り、薄桃色の風を切って菜の花畑が走り出す……。想像してみると何とも不思議な光景です。

わが子へのあたたかな愛情と、中也の明るい喜びを表現するために、長調の曲に仕上げてみました。この曲も、私が20歳前後にこしらえたものです。