今日2月24日は、ドイツに伝わる民話を「グリム童話」として集大成したグリム兄弟の弟ウィルヘルムが、1786年に生まれた日です。

「グリム童話」とは、グリムが創作した童話ではありません。ドイツに伝わってきた口伝えの昔話や伝説(民話)を、主として兄のヤーコブが収集し、弟のウィルヘルムが美しい文章に書き上げたものです。

兄弟が民話の収集を開始したのは、1806年頃といわれています。ドイツは、まだ一つの国になっておらず、小さな国ぐにわかれていて、国内はナポレオンとの戦争にかきみだされていました。

当時のドイツには、「疾風怒涛」(シュトゥルム・ウント・ドラング)と呼ばれる文学運動が発生していて、ドイツ文学の見直しが叫ばれ、民話や民謡など、大衆がこしらえてきた民族遺産に注目が集まっていました。そのため、数多くの作品集が刊行されてはいましたが、あまりにも改作が多いのです。共に、古代ドイツ語の研究やドイツ語学の研究家として知られていたグリム兄弟はこれを嘆いて、資料の正確性を求めて民話の原話収集からはじめました。

「グリム童話」(正確には「子どもと家庭のための童話」)の85編を収録した「第1集」が刊行されたのが1812年、「第2集」(70編)は1815年で、これが初版とされています。その後、1819年に第2版が刊行されてから版を重ね続け、1857年の第7版では200編となっています。

初版では、兄弟が主に、無学の老婆からの聞き書きをそのままの形で表現したため、粗さがめだちました。2版以降は弟のウィルヘルムが中心になって、内容を洗練させ、文学性の高い作品に仕上げていきました。

いずれにせよ、兄弟の功績は、民族の無形の遺産ともいうべき「民話」を総合的に掘りおこしたこと、昔話・伝説・神話などを、「民話」という学問として打ち立てたことでしょう。

日本にグリム童話を初めて紹介したのは1924年、翻訳家の金田鬼一でした。これがきっかけとなり、楠山政雄らたくさんの人が翻訳に挑戦し、今では240編以上ものグリム童話を読めるようになっています。

なお、グリム童話は、いずみ書房のホームページで公開している「オンラインブック」で読むことができます。 「せかい童話図書館」 では 「ヘンゼルとグレーテル」 「ブレーメンのおんがくたい」 の2点、 「レディバード100点セット」 では 「小人と靴屋」 「魔法のかゆなべ」 「金のガチョウ」 「狼と7匹の子やぎ」 「ガチョウ番の娘」 「眠り姫」 「ラプンツェル」「ランペルスティルスキン」 「勇敢な小さな仕立屋」 「親指トム」 「白雪姫」 「白雪と紅バラ」 「王女とかえる」 の13点です。ぜひ、のぞいてみてください。


「2月24日にあった主なできごと」

1873年 キリスト教禁制撤廃…1612年以来禁止されてきたキリスト教を、明治政府も国禁にしてきましたが、この日「キリスト教国禁」の高札を撤去。欧米諸国の非難や、条約改正を妨げる一因をなしていることを知った政府は、キリスト教を黙認する決断をしました。 まもなく、横浜、神戸、東京、大阪などにあいついで教会が建設され、明治文化や教育の発展に大きな力となりました。

1933年 国際連盟総会で抗議の退場…日本の国際連盟代表の松岡洋佑ら代表団は、スイスのジュネーブで開かれた臨時総会で、議場からいっせいに退場しました。前年に日本が中国東北部に建設した「満州国」を国際連盟が認めず、軍を引き上げるよう求める勧告案を、賛成42、反対1、棄権1で採決したことに抗議したものです。この総会の後日本は、3月27日、正式に国際連盟を脱退、国際社会の中で孤立する道を歩みはじめました。