「読み聞かせ」のすすめ 21

ある書店でのことです。子どもの本の棚の前に、ひと組の母子がいました。子どもは3、4歳の女の子、母親は30歳くらいです。その母子を観察していると、おもしろいことがわかってきました。

子どもが、棚の前に平積みしてある絵本をひとつ一つ見ていきます。ある本は表紙を見ただけで手を離し、ある本はページをめくってじっと見ていきます。母親は子どもの後ろに立って、その子が本を少し乱暴に置いたときだけ「あら、きちんと置きましょ」という時以外、「早くしなさい」「それより、こっちの方が」などと余計な口をはさみません。およそ、15分、思わず、その母親に声をかけてみると、こんなことを語ってくれました。

「平均すると、ひと月に4、5回子どもを書店に連れてきます。その日は子どもが主役で、他の買物はしません。本は子どもに選ばせます。子どもはまだ字が読めないから、本の内容がわかるはずはありませんが、絵を見ながら物語の中身を想像するのでしょう。どんなに長くても、20分くらいで結論をだします。こうして買いたい本が決まれば、子どもにお金を渡し、自分で支払いをさせます。こうして、その本どんなお話かなぁ、などと語りあいながら家へもどり、すぐ読み聞かせに入ります。すると、その本のことで頭がいっぱいになっている子どもは、息を殺すように聞いてくれます」

とても印象的な話がうかがえました。こういうやりかたも、時には実践したいものです。