こうすれば子どもはしっかり育つ「良い子の育てかた」 22

● 幼児には楽しいことが「善」、つまらないことが「悪」です

幼児である子ども自身にとっての善悪感は、親の考える善悪感、おとなの認識している善悪感とは、まるでちがいます。幼児にとっては、自分が楽しいこと、うれしいことが自分の善であり、楽しくないこと、いやなことが悪です。したがって、親の善悪感を絶対的なものとして、幼児の行動を 「それはいい」 「それはいけません」 と一方的に規制していくことには、大きな疑問が残ります。
もちろん、いけないことを、いけないと感じさせるようにしつけていくことは、たいせつです。しかし、幼児が楽しい、うれしいと思っていることは、どんなことにせよ、その幼児にとっては興味のあることであり、その興味こそ、幼児をのばすもっともたいせつなものであることを、忘れてはなりません。
親が新聞を読んでいると、そばへ寄ってきて手をのばし、その新聞をやぶいてよろこびます。それは、けっしていたずらではありません。新聞をやぶくことが楽しく、おもしろく、そこに、なにかを感じているから、それをしたがるのです。このとき 「いけません」 と叱り、ときにはのばしてきた手をかるくたたいて、その行為を規制したとします。すると、やがて、新聞に手をのばすことはやめるかもしれません。しかし、一方では、音をたてて、いろいろな形に新聞をやぶくことをとおしての、幼児なりの創造の楽しみをうばいとってしまうことになります。このとき、古い新聞を持ってきて 「はい、どうぞ」 と与えてやったらどうでしょう。新聞をやぶくことは悪いことだと気づくまでのあいだ、幼児は、その創造の楽しみを失わずにすみます。
「いけません」 という規制だけが、しつけではありません。