1983年1月に設立した「日本読書クラブ」のその後についてふれてみよう。
設立から10年後の1992年5月に、「くもん式」として有名な公文教育研究会の発行する月刊「ケイパブル」という教育情報誌の編集部から取材を受け、「作家と出版社の提携で、読書好きを育てて10年。2000家庭の会員をもつ日本読書クラブ」という見出し付で、次のような記事にしてくれた。10年間の歩みが、的確に記述されているので、2回にわたり紹介してみよう。

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親と子の読書の大切さ。子どもの人格形成にのぞましいしつけ。教育の正しいあり方。非行や暴力に走らない自制心のある子ども。……こんな願いをこめて親子読書運動を続けている 「日本読書クラブ」 をたずねました。


くもん記事


● クラブの発足と発展
『本を読む人を1人でも2人でもふやしていく。本を読みあうことを通して親と子の心が通いあったあたたかい家庭を1軒でも2軒でもふやしていく。読書により、ものごとを豊かに考える習慣を身につけた人びとの力を結集して、人間が人間らしく生きていくことができる社会をすこしずつでもきずいていく』
このような願いをもつ「日本読書クラブ」(東京都三鷹市) が1983年1月に設立されて、今年で足かけ10年になる。 クラブ発足のきっかけは、近頃の子どもが読書に親しまなくなり、受験勉強に追われ、その結果他人への思いやりや自主性がなくなってきたという読書調査を見て、それを食いとめるには幼児期の 「親子読書」 が最良だと考えたことから。
童話作家の有吉忠行さんやいずみ書房代表の酒井義夫さんが世話人となって、早船ちよ・早乙女勝元・なだいなだ・加子里子・長崎源之肋・田中澄江・萩原洋三・羽仁進・椋鳩十(故人)さんら作家、文化人の方々を講師に迎えて、クラブは発足した。
もともと読書好きな母親は、だまっていても子どもに本を買ってやったり、読んでやったり、さらには地域の読書会へ参加したりしている人も多いので、クラブとしてはそれほど本に親しむ習慣のない親子を掘りおこして運動を広げていく方針にした。
そこで、児童書出版社 「いずみ書房」 がバックアップして、その直販網を通じて毎月発行の会報『月刊・日本読書クラブ』を各家庭に配ったり、講師による講演会を各地で開いたり、また会員になった人の口こみなどで会員家庭をふやしていくことにした。
こうして、あまり読書好きではない人を読書好きにしていくという地道な活動が始まった。現在は全国に二千有余の会員家庭となっているが、足かけ10年の間に巣立っていった会員は約3万人になるという。
当初の目標だった50万人にはまだ及ばないが、地道な読書運動としてはそれなりの成果をあげているといえるのではないだろうか。

● 親への呼びかけ
「読書は本と人との戦いです。本にいどむ意欲を失えば、短絡的な視覚人間ばかりが育ってしまう。小学校入学前に親子ともども読書する習慣を身につけておけば、大きくなっても対話がとぎれることはないし、読書を通じて学んだ人間愛や人生の深遠さが情緒の安定にもプラスになって、暴力や非行に走る子は少なくなる」 と、有吉忠行さんはクラブの基本的な考えをかたっている。
このような考えをもとにクラブでは、次のような形で入会の呼びかけをしている。
* 子どもに読書の贈りものをしてみませんか。
* 親子読書で心の交流を深めてみませんか。
* 読書会で仲間の輪をひろげてみませんか。
* 自作の童話や絵本を発表してみませんか。
* 地域の文化運動に参加してみませんか。
* 会員の特典を生活に生かしてみませんか。
これらの項目は誰にでもわかりやすい事柄ばかりで、ことさら説明する必要はないが、その主旨は本を媒体にして親子がともども読書の楽しさや喜びを知り、社会への参加をうながし、心を豊かにしていくことができるという意味だそうだ。
そこでクラブでは、単に親子読書のすすめだけでなく個人読書から集団読書へ、さらには地域ぐるみの読書運動へと、読書の輪が広がっていくための様々な相談に応じている。
投書による初歩的な読み聞かせの方法についての相談にも文書でていねいに答え、また要請によっては専門の読書クラブインストラクターや顧問講師を派遣している。