「日本読書クラブカタログ(本の価値と楽しみ)」の第9章「文化地理」の項を紹介してみよう。

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● まだ身についていない国際感覚
地球上の国ぐにが交際すること、あるいは、その国ぐにの人びとが交際することを 「国際」といいます。そして、戦後の日本では、「国際社会の一員として」 「国際社会に生きる」 「国際的な視野で」 「国際交流を活溌にしながら」 「国際人として」 というようことばが、日常語のように使われるようになり、「これからの日本人は、国際感覚を身につけなければ」 「国際社会に生きなければ」 などと、いわれてきました。
しかし、たしかに日本という国は国際舞台で脚光をあびるようにはなったものの、また、海外へ出かける日本人は多くはなったものの、国民一人ひとりが、果してどれだけ国際感覚を身につけたかとなると、たいへん、あやしいものです。国際という言葉を口にする割には、そして、われもわれもと海外へでかける割には、ほんとうの国際感覚など身につけていないのではないでしょうか。日本は、地上で隣接する他国との国境をもたないこと、そして、四方を海に囲まれた孤立国であることが、まだまだ、日本人の国際意識をにぶらせているようです。
さて、では国際感覚をみがくには、どうすればよいでしょう。それには、世界の動きに関心をもつように心がけながら、国際問題を解明した本、海外旅行記、海外取材の本、世界史、民俗史、世界文化史などを手にすることが大切でしょうが、なかでも、もっともやさしく気軽に学べるのは、写真や絵を豊富に使って、世界各国の歴史と現実を紹介したシリーズものです。
いまのテレビ番組のなかで、たいへん役にたつものとして、多くの人によろこばれているもののひとつに、海外紹介、海外ドキュメントがあります。それは、映像をとおして、目で見て居ながらにして、世界のことがわかるからです。また、なまの映像におどろきながら、めずらしい映像を楽しみながら、実感的に世界を知ることができるからでしょうが、写真や絵を豊富に入れて世界を紹介した本 (シリーズ) は、視覚をとおして訴えてくるという点で、テレビ番組と同じ効果をもつものといってよいでしょう。

● 文化と地理を目で楽しみながら
「世界の文化地理」「世界文化シリーズ」「目で見る世界の国ぐに」「目で見るワールド図書館」「文化誌・世界の国」「写真で楽しむ世界の旅」など、世界を紹介したシリーズの多くは、このようなタイトルで出版され、いずれも、おどろくほどの写真と絵が駆使されていますが、共通している大きな特徴は、「文化地理」 「文化地誌」 ということばを使いながら、あるいは世界を知る 「図書館」 という大きなとらえかたで、文化や歴史や地理をひとつにとけあわせて、編集されているということです。
したがって、どれをとっても、たんなる地理のシリーズなどではなく、このことは、地誌とは 「その地域の自然・社会・文化などの地理的現象をとおして、その地域の特色を示したもの」、文化地理とは 「民俗・宗教・言語などを中心にして、その地域の特色を研究したもの」 という、言葉の定義でもよくわかります。つまり、どのシリーズも 「文化」 と 「民俗」 が中心であり、とくに、そこに生きた人びと、生きる人びとの姿が、こくめいに伝えられています。

● 日本を知るために世界を知る
もちろん、歴史や政治や経済や産業も語られています。そして、観光地ももれなく紹介されており、まさに、本で楽しむ世界の旅といっても、けっしてウソではないでしょう。美しい写真、現実を伝える写真、そして、写真のもつリアル性を保ちながら、写真よりも理解しやすく楽しくえがかれた絵、写真ではとらえることのできない歴史を伝える絵、図鑑の役割をも果すような知識的な絵などを見ながら、解説の文章を読んでいく、また、文章を読みながら写真や絵に目をやって、さらに理解を深めていく……これが、このシリーズのページをめくるときの醍醐味でしょう。10巻、20巻のシリーズの、どの巻のどのページをひらいても、楽しませてくれます。それは、ほとんどが未知の世界、はじめて知る、はじめて見る世界だからです。
日本は 「世界のなかの日本」 なのですから、日本をほんとうに知るには、世界を知らなければいけません。日本人のことを考えるなら、世界の人びとのことを考えなければいけません。口さきだけで、どこそこの難民はかわいそうだ、などというのではなく、心から理解しなければダメです。
もし、世界文化地理シリーズのひとそろいが家庭にあって、家族みんなで楽しむことができたら、世界を見る目、世界を考える心は、たとえ海外旅行などしなくても、しぜんに身につくのではないでしょうか。
とくに、この国際感覚は、子どものときからしぜんに植えつけることが、たいせつです。子どもを 「ワールド」 の中に置いてやることは、子どもの社会的な知識をひろげるだけではなく、大きく生きる夢をも、希望をも育ててくれるのではないでしょうか。

(日本読書クラブ推薦図書の項は省略)