「日本読書クラブカタログ(本の価値と楽しみ)」の第2章「学習事典」の項を紹介してみよう。

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● 使いかたできまる価値
学習のための事典という性格から、全15巻、20巻、25巻など、どの事典も、「文部省(現文部科学省)の学習指導要領に準拠」 し 「教科書の内容にあわせて」 「子どもの学習の展開に役だつ」 ように編集されています。したがって、各シリーズとも、例外なく、教科別に巻が構成されています。低年令層を対象にした学習事典の場合でも、各巻に教科名は明記していなくても、その全体の構成は、やはり同じです。ところで、各種事典の特色をそれぞれのカタログから拾うと、「学習の要点をズバリ説明」「基礎学力から応用までをやさしく」 「目で見て楽しみながら学べる」 など、多彩です。そして、本巻のほかに、日本地図、世界地図、人名事典、教科用語辞典、親との教育相談、子どものワークブック、質問券、添削券を付すなど、別巻にも特色をもたせるように、くふうされています。形のうえからいえば 「目で見て楽しみながら」 という宣伝のとおり、絵や写真や図をふんだんに入れて編集されていることが、どのシリーズにも共通しています。
しかし、要は、使いかたでしよう。このような大部な事典から、子どもに、わからない問題の解答をひきださせるだけでは、ダメです。問題の解答を得させるよりも、内容の豊富な事典を使うことによって、「学習に興味をおこさせ、自ら学ぶことの楽しさを学ばせる」 ことこそ、もっともたいせつでしょう。

● 画一的な学習からぬけだすために
いまの子どもたちの多くは、学校教育の画一的なつめこみ主義のえいきょうを受けて、まわりから、人から 「学ばされる」 ことに、なれすぎています。そして、その反作用で、「学ばされるものを学ぶ」 ことにはすぐれていても、「自分から、学びたいものをさがして、主体的に学ぶ」 力には欠けています。実は、「学ぶ」 ということでは、ここが、いちばん問題なのです。なぜなら 「自ら主体的に学ぶ」 ことを知らないで育った子どもは、「学ばされる」ものから解放されると、もう、学ぶことを放棄してしまいます。また、学んでいるときも、その 「学ぶ」 行為が受け身ですから、学習に独創性がなく、学ぶ内容が型にはまってしまっています。ところが、「自ら学ぶ」 ことの楽しさを知った子どもは、学ばされなくても、自分から学ぶようになります。つまり、自分からすすんで勉強するようになります。また、自分から求めて学習にとりくむのですから、学ぶ内容も幅広く個性的なものになります。親は、この学びかたのたいせつさを、よく知っておかなければいけません。学校の先生のことにしても、知識を教えることのじょうずな先生よりも、子どもたちひとりひとりに 「学びかたを学ばせる」 ことのじょうずな先生のほうが、すばらしい、ほんとうの先生だといわれているのです。自ら学ぶということは、人間の生涯にとって、もっともたいせつなことです。自ら学ぶ心が、つねに人生を前向きにきりひらいて生きていく原動力になるのですから。

● 与えっぱなしではなく親も手にとる
以上のようなことから、せっかく子どもに買い与えた学習事典は、たんに予習、復習のときだけではなく、つねに、気軽に利用するように習慣づけることがたいせつでしょう。そのためには、子どもに与えっぱなしではなく、親が子どもといっしょに事典のページをめくってみるなどして、事典を使う楽しさを、早く、子どもに気づかせることです。子どもに学習事典を買ってやった父親が、理科の巻を子どもといっしょに開いては、家庭でできるいろいろな実験を楽しみ、その結果、いつのまにか子どもは理科に深い興味をもつようになり、そればかりか、ものごとを科学的な目で見るようになった、という実例がありますが、こんなことは、親の、ちょっとした心づかいがあれば、どこの家庭でも可能なことではないでしょうか。学習事典を利用することによって、子どもが、「学ぶ楽しさ」 を少しでも知ってくれたら、それは、どんな学習塾に通わせるよりも、すばらしいことにちがいありません。

(日本読書クラブ推薦図書の項は省略)