せかい伝記図書館」の執筆の中心にお願いしたのは、「全国学校図書館協議会」編集部長を歴任し、その後フリーライター、作家として活躍しておられた有吉忠行氏であった。このシリーズの完成後の1982年、「いずみ書房」の営業幹部を前に「厳しい出版理念に基づいた伝記シリーズの完成を喜ぶ」と題した講演をお願いした。その記録を、何回かに分けてここに紹介する。

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まずはじめに、いまの子どもたちの読書状況について、かんたんに申しあげてみます。私が4、5年前までつとめておりました全国学校図書館協議会では、20数年来、毎日新聞社といっしょに読書調査を行ってきておりますが、この調査結果によりますと、マンガや週刊誌をのぞいた1ヵ月の平均の読書量は、小学生が5冊、中学生になるとわずかに2冊です。最近の子どもたちは、ますます本を読まなくなってきているといわれるのも当然です。でも、小学生の1人平均が5冊なら、読んでる子はひと月に何10冊も読んでいることになり、読書量の減をそれほど悲観することはないという見方もあります。

ところが問題は、読書の量よりも内容です。つまり、やや専門的な言葉でいいますと、考える「重読書」よりも、ただ楽しむだけの「軽読書」が多くなってきているということです。これは、昭和30年以降、テレビの普及とほとんど平行しています。具体的に申しあげますと、昭和30年から40年ころまでの読書調査の結果では、子どもたちが多く読んでいる本の上位に、必ず内外の名作が半分以上あがっていました。宮沢賢治や夏目漱石などの作品です。ところが、最近はこれらの多くが姿を消し、かわりに、つりの本をはじめとして趣味の本などの軽読書材がたいへんふえてきています。これは、子どもに限らず、おとなの世界でも、全く同じで、文学全集のようなものが現実に売れなくなっています。

これらのことは、やや極端にいいますと、ほんとうの読書というものが、だんだん消えているということです。つまり、遊びの読書になってしまっているということです。このことは、子どもにもおとなにも、マンガがたいへんよく読まれている事実を見れば、すぐわかります。

ただし、遊びの読書がすべて悪いとは申しません。しかし、全国学校図書館協議会などが、20年も30年も読書運動をつづけていることには、大きな理由があります。それは、本を読むことを通して 「自分の頭で考える」 子どもを、多く育てたいからです。